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04 少しだけ付き合ってあげます!

 ローラはエミリア・アクランドに連れられて、魔法学科一年の教室に連れて行かれる最中だ。

 今年の入学生は、戦士学科が四十三人。魔法学科が三十九人。

 それがローラが異動になったおかげで、四十二人と四十人に変わった。

 いずれにせよ一クラス分であり、それは例年と同じらしい。


 エミリアいわく、ローラが気絶していた午前中の間に、入学式に校舎の案内、あと自己紹介も終わってしまったという。

 そして昼休みも過ぎ去り、今から午後の授業が始まる。

 昼食を抜くハメになったのは辛いが、その分、晩に多く食べよう。学園の食堂は無料だったはずだし。


「午後は訓練場に行って皆の実力を見る予定なんだけど、その前に教室で、ローラさんの自己紹介をしてもらうわね」


「はい。ところで……やっぱり私、ずっと魔法学科なんですか?」


「そうよ。嫌かしら?」


 嫌だ――と、ローラは断言してやろうとした。

 当たり前だ。

 戦士学科に願書を出し、試験を受けて合格したのだ。

 それが入学式の当日になって、いきなり魔法学科に異動なんて嫌に決まっている。


 だが、さっき保健室で言われた言葉が妙に引っかかる。

 魔法だって悪くない。

 彼女はそう言っていた。

 他の誰かの言葉なら即座に忘れてしまいそうな陳腐なもの。だがローラは、あんなに得体の知れない人物と出会ったのは初めてだった。


 しかし父と母は、ローラが戦士学科に入ると思い込んで学費を払ったはずだ。

 それなのに魔法学科に入ったら、詐欺ではないだろうか。


「あの、お父さんとお母さんは許してくれるでしょうか? 入学費とか授業料とか、揉めるんじゃ……」


「それは大丈夫よ。だってこの学園。国家予算だけで運営してるから。つまり無料。あなたの両親は入学費も授業料も払っていないのよ」


「え、そうだったんですか?」


「そして学園の理念は、若者の才能を伸ばすこと。この一点。つまり、あなたに魔法の教育をしないということは、学園の理念に反するわ。学園側の判断で学科を異動させるというのは前にもあったことだし、契約書にも書いてあるの。あなたは読んでいないと思うけど」


 九歳のローラが契約書など読んでいるわけがない。そもそも存在を知らなかった。

 下手をすると両親も読んでいないのでは?

 もっとも、契約書を熟読していたとしても、ローラが魔法学科に異動になるなど、想像もしてなかっただろうが。


「……私がもし、どうしても魔法学科が嫌だと言ったらどうなります?」


「難しいわね……あなたがもっと普通の生徒だったら、希望が通っていたかもしれないわ。けど、あなたの魔法の適性はオール9999。観測史上最高。今この学園は、あなたに注目してるのよ。どうやってその才能を伸ばして行くか、教師全員が考えている。私を含めて。ねえ、お願いだから私たちを信じて、魔法学科で授業を受けてみて。魔法だって楽しいわよ? 実際にやって、それでもどうしても嫌だったら、そのときにもう一度相談しましょう。だから、ね」


 保健室の女性と似たようなことをエミリアは言う。

 なるほど、楽しいのかも知れない。

 そこは否定しない。

 しかし、一番楽しいのは剣だ。

 ローラは九年しか生きていないが、そのくらいは知っている。


 いや、知った気になっているだけ?

 実は魔法を使ってみたら、案外、気に入ってしまったりして?


 そんなわけはない。と思いつつ。

 いいだろう。そこまで言うなら、付き合ってやろうじゃないか。


「……分かりました。ひとまず、です。ひとまずは魔法学科に入ります」


「ありがとうローラさん! 今日からよろしくお願いね」


「……はい。よろしくお願いします」


 そしてローラは、魔法学科の教室に入った。

 自分がここに馴染むわけはないと、このときは決めつけていた。

今日はあとでもう一回投稿する予定です

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔法を鍛えないのは愚かだと思うケースではあるけど、 剣士としても超一流の才能があるのだから、 魔法学科の放課後にでも一流の剣士による個人レッスンでもつけてあげれば良いのにって思う。 詰め込み…
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