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259 三学期です

 そして、冬休みはあっという間に終わった。

 ローラとしては、パニッシャーというとても強いモンスターと戦えたし、初代魔法少女に出会えたし、とても充実した冬休みだった。


 なぜか途中からシャーロットが反射の魔法にはまってしまい、その練習に付き合わされたが、ただシャーロットが雪まみれになるだけで終わった。

 一度だけ雪玉が跳ね返ってきたことがあったが、まあマグレだろう。


 それより、アンナが何やら、ブルーノとの特訓で新しい技を習得したようだ。

 二人ともニヤリと笑うだけで詳しいことを教えてくれないが、表情だけで分かってしまう。

 あれはきっと新必殺技だ。


「はーい。それでは冬休みの宿題を提出してね。ローラさん。シャーロットさん。冬休みの宿題を提出してね」


「どうして私たちだけ名指しなんですかエミリア先生!」


「夏休みに何をやらかしたか、もう忘れちゃったの?」


「ぐぬ……あれは過去の話です。私たちは日々成長しているのです」


「その通りですわ。問題集も日記も完璧ですわ」


 と、ローラとシャーロットは鼻息を荒くして教壇の上に宿題をバシンッと置いた。

 それをパラパラめくったエミリアは、「へえ!」と感心した声を出す。


「本当にちゃんとやってるのね。偉いわ。先生が間違っていたわ。ごめんなさいね」


「分かればいいのです。えっへん」


「ところで日記に『ドラゴンより強いパニッシャーを倒しました』とか書いてあるんだけど、これ校則違反じゃない?」


「……え?」


 校則違反。

 言われてみれば確かにそうだ。

 しかし、あれは人類存亡の危機だったのだ。


「許してくださいエミリア先生! ああするしかなかったんです!」


「そうですわ! わたくしたち……特にローラさんがいなければ今頃、世界がどうなっていたのか分かりませんわ!」


 ローラとシャーロットが必死で弁解すると、エミリアはクスクス笑い出した。


「分かってるわよ。話は学長から聞いてるわ。だから、これに関しては怒らないけど……校則違反なのは確かなんだから。次からこういうことがあっても、日記には書かないでね」


 なるほど。それはごもっともな意見だ。


「はーい」


「承知しましたわ」


「まあ、校則違反しないのが一番なんだけどね……」


 それもまた実にごもっともな意見だが、別にローラたちは違反したくてしているのではないというのもご理解頂きたい。

 なんか来るのである。敵が。


 とにかく宿題は提出できたし、お説教もなし。

 三学期はとても平和に始まった。


 そして昼休み。

 久しぶりの学食だ。


「ロラえもん殿! ハク様! シャーロット殿にアンナ殿! お久しぶりであります!」


 カウンターに行くと、獣人のミサキが尻尾をピコピコ動かしながら出迎えてくれた。

 被った三角巾の下で耳も動いている。つい触りたくなってくる。


「お久しぶりですミサキさん。冬休みは何をしてたんですか?」


「暇なのでオイセ村に帰っていたであります。故郷でノンビリであります」


「それは有意義な冬休みでしたねぇ」


 ローラはしみじみと言う。


「ところでロラえもん殿。冬休みの間に、ハク様用の日替わりメニューができたであります」


「え、それは凄いです! もう私の分をハクに分け与えなくてもいいんですね!」


「そうであります。ロラえもん殿は自分の分を全部食べられるし、ハク様も太る心配がないであります」


 ローラは喜びのあまり飛び上がった。

 ハクも頭の上で「ぴー」と嬉しそうにしている。


 冬休みになる直前まで、ローラとハクはそれぞれ一人前ずつ注文して食べていた。

 しかしローラはともかく、ハクは子猫程度の大きさしかないのだ。それが一人前も食べたら、当然、食べ過ぎ。

 結果、ハクはマシュマロのような体型になってしまった。


 幸いダイエットに成功してハクは元のシュッとした体型に戻ったが、リバウンドしないよう、もう一人前を食べさせるのはやめにし、ローラの分から少し分け与えることにした。

 おかげでローラの量が減ってしまった。


 だが、もうそんな悲しい思いをせずに済むらしい。

 革命である。


「じゃあ、オムレツと、ハク用日替わりメニューをください!」


「了解であります。今日のハク様用はミニオムレツであります」


「わーい。おそろいです」


「ちなみに、明日はミニハンバーグの予定であります」


「……おそろいなのは今日だけでしたか」


「ロラえもん殿。明日もオムレツでありますか。流石でありますなぁ!」


「ローラさんは冬休みの間、実家で健康的な食生活だったので、きっとオムレツが不足しているのですわ。ちなみにわたくしはトマトピザにしますわ」


「健康的な食生活とは言っても、二日に一回はオムレツを食べてたような……あ、私はキノコパスタにする」


「了解であります!」


 そして注文したものがすぐに出てきた。

 この学食のスピード感は、他のレストランなどでは真似できない。

 それでいて美味しいのだから、不思議なものである。


「ところで、そろそろシャーロットさんの誕生日ですよね」


 着席したローラは、早速オムレツを食べながら話題を出した。

 今日は一月十七日。

 シャーロットの誕生日は二月二日。

 あと半月ほどしかない。


「私の誕生日パーティーはあれほど盛大にやってもらいましたし、アンナさんの誕生日パーティーだってやったんです。シャーロットさんのも計画しないと」


「確かに。場所はどこがいいかな?」


 アンナはパスタをフォークでくるくる巻きながら呟く。


「まあ、お二人とも、そんな気を遣って頂かなくてもよろしいですわ。ですが……うふふ。わたくしの誕生日を覚えていてくださって嬉しいですわぁ」


 シャーロットは両頬を手で包み、笑顔で体をくねらせた。


「シャーロットさんは素直なのが美徳ですね。では早速、陛下にお願いして、私のときのように王宮を貸し切って……」


「お、お待ちくださいローラさん。流石のわたくしも、自分の誕生日パーティーを王宮で開かれたら、気後れしてしまいますわ……」


「ええ? じゃあどうして私のは王宮だったんですか? 自分が気後れするようなことを私には……」


「王宮の大ホールを貸し切ったのは学長先生ですわ!」


「確かに。あれに関してはシャーロットは無実」


「そ、そうでしたか……疑って申し訳ありません……」


 シャーロットの日頃の行いのせいで、彼女の仕業だと思ってしまった。

 証拠もないのに決めつけはよくない。

 反省である。


「分かって頂けたならいいのですわ。それと、わたくしの誕生日は毎年、お父様とお母様が実家で祝ってくださいますわ。ですから、ローラさんとアンナさんをそこにご招待しますわ」


「おお、そうでしたか! では、お言葉に甘えちゃいます」


「ふふ。ローラさんのためにオムレツを用意しますわぁ」


「わーい! って、シャーロットさんの誕生日なんだから、シャーロットさんの好物を用意しないと」


「わたくしの好物はローラさんの笑顔ですわ」


「な、なるほど……?」


 よく分からなかったが、とりあえず「なるほど」と言ってみたローラだった。


「そうと決まれば、約束通り、シャーロットに手袋を作ってあげる」


「私も帽子を作ります! 学長先生に作り方を教わらないと」


「ありがとうございます。それはそれとして、ローラさんに別のお願いをしてもよろしいでしょうか?」


 シャーロットは不意に真剣な顔になる。


「改まってどうしたんです? 私にできることなら何でもしますけど……」


「わたくしの誕生日の夜。ローラさんには――」


 そして語られた願いは、とても唐突で、されど至極当然のように聞こえた。

 ローラは深く考えずに頷く。


「分かりました。ではパーティーが終わったあとで」


「受けてくださり、ありがとうございます。ローラさん」


 シャーロットはフッと笑う。

 気負いがあるのかないのか。どれほど決意があるのか。表情からは読み取れなかった。


「……それ。私も見てていい?」


 アンナが呟く。


「ええ。もちろんですわ」


「……分かった。横で見守る」


 少し重い雰囲気はそこで終わり。

 あとはいつもどおり、おしゃべりしながらランチを楽しんだ。

 久しぶりに食べた学食のオムレツは美味しい。

 ハクもミニオムレツを美味しそうに平らげてしまった。そして、物足りなそうにローラを見上げるが、おねだりされても分けてあげないのである。

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