3話 劣等感
「どう?ギター行けそう?」
バンドのメンバーに話しかけられる
「うん、この曲有名だし知ってたから大丈夫大丈夫」
このバンドで今練習してる曲はメジャーな曲
本当はもう少しマイナーなバンドでもよかったけど
引っ込み思案の私には自分から意見を言う事は
とても難しく、ただただ合わせることしか出来ない
いつだってそうだ。
この部活に入って担当の楽器を決めるのも
私は遠慮してしまった
本当はボーカルしたかったけど恵が居たから
恵は声が可愛く愛されキャラ、楽器も1通りこなせ
親もプロの演奏者だから家に色々な楽器も揃えてて
しかも優等生という事で皆からちやほやされている
これが
「才能の差」
この劣等感はやはりいつになっても拭えない
「恵ちゃーんこの曲さ弾ける?ちょっとメンバーさっき辞めちゃってさ。お願い」
「いいですよ、ここのサビからですね!頑張ります!」
もちろん女王様のお気に入りなので甘やかされている
そして頼まれた事も担当してないキーボードを
まるで息をするかのようにこなしていく
演奏も終わり女王様はお気に入りの後輩と楽しそう
私は…ここに居る価値はあるのか?
私のバンドのメンバーは5人
私以外は昔からしている熟練者
しかも揃いも揃って先生にも好かれる優等生
もちろん軽音部は初心者歓迎だが
そりゃいい待遇を受けるのは経験者だろう
どうせ恵はキーボードも出来るなら歌いながらギターをなんて事もきっと、いや絶対出来る。
だって前に先輩と弾いてる所も見たもん
本当に何でもこなせて羨ましい
なんて1人でぼんやり考えていると
「ありさ、ちょっといい?」
振り返ると章悟がいた
「どうしたの?」
「いや、ちょっと考え事してたみたいだし。ギターで難しいところあった?大丈夫?」
あーー優し過ぎる。
本当に章悟はいい人だ
こんな才能のない奴にさえ気を使ってくれてる
「ほかのメンバーはみんな何でもこなせるからちょっと羨ましいなって思ってただけだよ、大丈夫大丈夫」
「確かに俺もドラムとかギターとか出来るけどそんなの経験を重ねて練習すればありさは素質あるから上手くなるって。俺も分かんない事あるけど教えられる事は教えるから。な?」
章悟の優しい言葉が心にしみる
こんな初心者にも彼は気を使ってくれてるのだ
「ありがとう。あ、そういえばここが…」
「ちょっとー。章悟くん来てー」
わからない事を聞こうとしたら女王様の邪魔が入る
こんの女王様め…、タイミング悪すぎ
「はーい。ごめんありさ、少し行ってくるね」
「うん。いってらっしゃい」
彼の背中を見ていると視線の先の先輩と目が合った
女王様はにこっと笑った
とことん嫌味な女王様
本当につくずく嫌な部活だ
それから部活が終わりの時間をつげる
「はぁい。みんな片付けてねー」
女王様の声でみんな機材やらコードやら楽器やら
片付け始め、私もしゃがんで片付けを始める
「あれ……?」
しかしここで問題が発生した
私の音叉がない
音叉とはギターをチューニングする時に使う道具です。作者は元軽音部でしたが過去の話なので間違っている所やわかりずらいところがあるかもしれません。そうしたら教えてただけるとうれしいです!