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境界の旅人  作者: KEN-G
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~賢者アスラ=ミスラの出発~

chaos 01


私の名は『アスラ=ミスラ』

現魔戦争(ゲンマセンソウ)の際に、師匠であるブラック=ハートから賢者の称号をもらった。


その為、私を名で呼ぶものは少ない。


賢者様、勇者の弟子、お弟子さんなどと呼ばれることが多い。

一部の人は嬢ちゃんなどと呼ぶが…

そんなことはどうでもいい。



あの戦争の時、師匠から退却命令が出て、嫌な予感はしていた。


師匠の眼には決意の色が見えたから。


もう、帰ってこないことは分かっているけど納得は出来ない。

あの師匠が死ぬなんて考えられないから。


私の修行に付き合った時だって、暴走寸前の魔術を受けて無傷だし。

王国騎士団100人と戦って5分で全滅させるし。


「てか、あの人死ぬの?」


思わず口に出てしまった。


「………の!……じゃどの!賢者どの!」

「うわぁい!?」


しまった、やってしまった!


現在私は、現界において最も大きな国である

『グランディール王国』

の王都にいます。


戦争は終わったが、まだまだ復興は終わっていない。


特に小さな村や町などでは、生きることで精一杯なところだってある。


今後の復興の会議で私は呼ばれていたのだ。


「嬢ちゃん、聞いてたか?」


いまだに私を嬢ちゃん呼ばわりする男。


顔には切り傷が目立ち、白髪混じりの短髪に屈強な体格をしたインパクト大なひげ面親父。


グランディール王国騎士団長、ディオエルム=グランバートだ。

かの戦争において、私や師匠とともに先陣をきって戦っていた一人だ。


「聞いていなかったな、アスラ」


少し呆れた顔で声を発したのは、手入れの行き届いている綺麗な金髪に、誰がみてもイケメンと言うであろう美青年。若くしてグランディール王国の国王であるガルド=グランディールであった。


「申し訳ありません。国王様」


そんな呆れた顔で見られたら、謝るしかない。


「アスラ師匠は相変わらず、考え事をしてると何にも周り見えなくなりますよね」


高く透き通った声で私をからかい、ニヤニヤしている。

王国魔術師団団長であり、私の弟子。

綺麗な白金の長い髪に整った顔立ち。

誰がみても美人だというだろう。

ティエル=グランルード。


れっきとした男である。


本来ならば、ここに師匠を加えてグランディール王国の会議をしていた。


「聞いていなかったようなので、もう一度説明するが、賢者アスラは明日より王都を出立してかの境界のエストリアへ向かってくれ。今は大分復興が進んだが、やはりあの地周辺はまだ貧しいようだ。また、境界の歪みの調査も頼む。まだまだわからないことばかりだからな」


これは願ってもないチャンスだ。

戦争後、王家の調査は入ったが私はまだあの地へ行っていない。

2年経ったが何かの痕跡は見つけられるはず。


「了解しました!国王様!」


私は敬礼し、任務を受けた。


その後、会議はその他地域の復興の話となり。

王国騎士団や魔術師団の遠征などが決まった。


会議が終わり、私は一目散に住んでいる家へ帰った。


家といっても賃貸の集合住宅。

2DKの一人暮らしだ。


王は明日と言っていたが待ちきれない。

早々に支度を終えた私は、王都の城壁へと向かった。


グランディール王国王都『グランシュエムル』は円形の街であり、中央に王城がある。

城下町を囲んでいるのが約100m程の高さがある城壁だ。

東西南北に門があり、出入りが出来るようになっている。


出入りには許可証が必要となり、無ければ審査に2日ほどかかる。


不法に街へ入ればたちまち街の憲兵に捕まるだろう。


境界のエストリアは王都から北へ行ったところだ。

かなりの距離があるが、伊達に賢者やってない。



「やっぱり、嬢ちゃんはすぐ出るよなぁ」



北の城門には、ディオエルム=グランバートがいた。


私の動きはこの男にすぐばれるのだ。


「あの地はまだ未開のところもある。ブラックを探すことに気を取られてやられんなよ」


そう、そしてこの男は心配性なのだ。


ディオエルムは、そう言って私に小さめの小包を投げてきた。


「娘のリシェルが作った弁当と、嫁が作ったミスリル鉱の小手だ。持ってけ」


私の幼なじみ、ディオエルムの娘リシェル。

料理が大好きなのに、王女の近衛騎士団にいる。

ディオエルムの奥さんは防具職人で、王国騎士団の専属職人の一人だ。


「てか、ミスリル鉱なんて高価なもの頂けないですよ!!」


この小手だけで一年は暮らせる。

王国騎士団の装備より数倍良いものだ。


「だから、必ず返しに来いだとよ」


あぁ、なんていい人達なんだろう。

だからこそ師匠は命をかけたのだろう。


「必ず返しに来ます!行ってきます!」


これ以上ここにいると、行く気が薄れてしまう。


私は叫んで、外へと駆け出した。


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