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目に映るもの

 あんたは、『常識』って何だと思う?


 毎日変わらずに訪れる朝のことかい。何度も繰り返される、退屈な日々のことかい。

 俺が思うには、常識というものは、人それぞれが小奇麗に創る砂の城のようなものだ。

 ……ん、例え方がよくわからない? なるほど確かに、分かりにくかったかもしれないな。なら、少し話を聞いてくれ。聞けばきっと、納得してくれると思うから。

 例えば、少年時代の『常識』だ。

 テレビに映るものは、全て本物だと思っていた。画面の中で戦う正義のヒーロー。彼らの存在を疑うことはなかったし、不思議な力でみんなを助ける魔法少女も、世界のどこかで奇妙な事件に巻き込まれつつも、誰かを助けているのだと思っていた。

 そんな彼らが画面の中にしかいない空想の存在だと知った時、俺の『常識』という砂の城は音を立てて崩れ去ったよ。その時の落胆ぶりと言ったらもう、凄まじいものだった。しばらくは満足に飯も食えなかったね。

 え、これもわかりにくい? なら、何で例えればいいんだろう……。そうだな、他にいい例えは思い浮かばないから、分かりにくいかもしれないが、万人受けしそうな話で許してくれ。

 あんたがまだ子供だった時、不思議な世界の住人を信じてはいなかったかい。

 例えば、そう――毎年クリスマスには、サンタクロースがプレゼントを運んでいると信じていた、とか。御伽噺に登場するような白馬の王子様、助けを求めるお姫様らが、自分を常識から抜け出した不思議の世界へ連れ出してくれる――とか。そんなことを思うことはなかったかい。きっと、誰でも一度くらいは経験があるはずだ。

 それが嘘だと知った時、がっかりしなかったかい。自分の中で、何かが崩れていくことはなかったかい。つまりは、そういうものなんだ。

 この例えなら、まだわかりやすい? そうか、それならよかった。

 じゃあ、話を続けるとしよう。

 常識というものは、砂で出来た城のようなもの。いつ波に攫われるかわからない。いつ誰かに踏みつけられるかわからない。少しでもバランスが悪くなったら、すぐに形が歪んでしまう。そうして、変わってしまうものなんだ。

 だから、気を付けた方がいい。

 あんたの前にある常識は、突然に姿を変える。何がキッカケになるかはわからない。

 あんたが自分で、砂の城に躓いたからかもしれない。誰かが砂の城を踏みつけたからかもしれない。もしかすると、あんたの預かり知らぬところで、あんたの造った(せかい)は、人知の及ばぬ闇に沈むかもしれない。そして、危機が訪れるかもしれない。

 もし、常識ではあり得ない悪意が突然現れた時、あんたなら一体どうする。

 何もできずに闇に怯えるかい。圧倒的な力を前に恐怖するかい。

 それとも――。



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