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適当ホラーっぽいシリーズ

トンネルの奥の怪

作者: リナ・リーベルト

 トンネルの中って言ったらどんなイメージがある?

 基本的にはバスとか車でブーンと通り過ぎるイメージじゃない?

 橙色の光が連なり、他の多くの車が通る中、自分達もその一団になって『おおー、トンネルだ』なんて家族で笑い合う、良い感じだよね。バスだとうるさくて会話ができないけど。

 で、廃止されたトンネルってどう思う?

 明りもなく、他の車もなく、想像以上に静かなのに、自分が立てた音は大きく反響する。

 完全なる闇、自分以外の音が聞こえない空間、単なる小動物が不法に投棄されたゴミに擦れた音だけでも、凄く怖い。

 で、これは私がそんな廃トンネルに行った時の話。

 割と有名な心霊スポットだったわけでさ、正直それが奇妙だと思ったの。

 だって普通の心霊スポットって病院とか、廃墟とか、人が死んだからそこに幽霊が出るって設定でしょ? トンネルが廃棄されただけで心霊スポットって変だし、だから気になって行ってみたの。

 でも雰囲気は、本当に凄まじいよ。そこは風の音が激しくてね、女の人の声が混じって……なんて真剣に考えるくらい、音がした。

 普通のより明るいペンライトだけ持って私はそこに入った。

 耳をつんざく風の轟音、首筋を這うような冷気に満ちた九月、その中は不思議と生暖かった。

 壁には地元の不良がスプレーで書き残した意味のない落書きがあったけれど、それすら恐怖を醸し出す呪いのように見えた。

 足元にはゴミ袋や毛布なんかもあった。多分ホームレスかなんかが雨風を凌ぐために住んでたんだろうけど、どうしてそんな好条件をホームレスは毛布を捨ててまでいなくなったのか。何か恐ろしいものを見て、毛布すら捨てて逃げたのか、それともここで何かと出会い、命を失ったのか……。

 いろんな想像をしながら一歩、一歩と奥へ踏み入れる。後ろに見える星の光がなくなって、ついには完全な闇に包まれた。

 そのトンネルは当時高速道路の開発をしていたんだけれど、これまた何かの曰くがあったらしく途中で頓挫したらしい。

 だから最奥は岩壁が見えているだけで何もない、それだけ確認したら帰ろうっていう計画だった。


 一歩一歩踏みしめる度に、音と視覚以外に臭いも混じってきたの。

 だいぶ奥まで不法投棄があるらしくて、生ゴミとかそういう物の臭いがかなり鼻につく。ペンライトで照らされたものの中に人の死体でもあるんじゃないか、そしてそれがあっても不思議じゃないくらいの異臭が漂っていた。

 流石に気味が悪くなってきて、周りを見るんじゃなく足元にだけペンライトを集中させて私は進み続けた。

 足元に虫なんかが蠢くのを見るとビクッと心臓が跳ね上がるけど、それだけ。たまにゴミ袋なんかを踏んづけたりすると、つまずきそうにすらなる。

 一体なんで自分がこんな罰ゲームみたいなことをしているのか、なんて不安を感じながら、まあ私は恐怖に立ち向かっている、なんて根拠のない自信を持って、極度の興奮状態になって、ただ前だけ見て進んでいく。

 するとそこにぼうっと白い人影が見えたの。

 足を止めた。そしてそれをじっと照らしたの。

 反応はない。けれど直立不動のそれは、薄汚れたマネキンだった。

 それだけなら笑い話で済んだんだけど、それは白装束と三角巾を頭につけた死に装束のマネキンだった。

 心臓が跳び出るかと思った。マネキンは服を着た時にどう見えるか、のためのディスプレイであって、そんな悪趣味なコスプレをさせるためじゃないもの。

 じゃあ一体誰が、どうしてマネキンに服まで着せてこんなところに捨てたのか?

 私はそっと近づいて、そのマネキンを詳しく調べてみることにした。

 そしたら、服を脱がしたら、心臓のところに五~六本も釘が打ってあった。

 それに、触ってみると、体のあちこちの関節に髪の毛が挟んであるの。

 これで予想がついたわ。丑の刻参りってやつね。藁人形に髪の毛を入れて釘を打つあれ。

 ただ違うのは条件、けど私が知ってるそれよりも上位の呪いみたいな雰囲気で、肝を冷やした。

 丑の刻参りって普通呪っている最中を見られると、呪いが跳ねかえるっていうけど、呪い終わった時ってどうなのかしらね?

 そんなことはどうでもいいか。私は後にも先にも呪いの最中を見たことがないから。


 ……ただ、それを放置して先に行って、岩壁にまで辿り着いた時は流石に言葉を失ったわ。

 同じようなマネキンが十体並んでいたの。

 岩壁に大きな杭で打ち付けられて。

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― 新着の感想 ―
[一言] 通りすがりに読ませていただきました。 文章がとても読みやすかったです。内容がスッと頭に入ってきて、その場の情景が目に浮かぶようでした。 特に最後のマネキンのシーン、想像してゾッとしました。…
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