第一期--No.9 座禅する魔導師
僕たちは村の中心部へと入っていった。
すると、黒いオーラを感じる。
ーーーーーー「仏説観無量寿経」ーーーーーー(ぶっせつかんむりょうじゅきょう)
「うわっ・・・」
僕は、新しく手に入れた能力を使った。
すると、煩悩が渦巻いているのを感じた。
「沙羅、村の中心部では煩悩が渦巻いている。」
「新しい能力をはやくも使いこなしているようね。
ありがとう、じゃあ急ぎましょう。」
僕たちは中心部にたどり着いた。
そこでは、軽く50人はいるであろう武装集団が、合戦を繰り広げている。
僕たちが近づいたのにも全く気づいていない。
「くそ、これじゃあ手のつけようがない。
それなら・・・」
僕は、召喚魔術を唱えようとした。
「だめ、この人数を相手に煩悩を喰らい尽くせるはずがない。
かえって、状況を悪化させる。」
「くっ・・・」
僕はただ見ていることしかできなかった。
ーーー「お前らは、召喚僧だな。」
そこには、ツルツル『・・・スキンヘッド』の男が立っていた。
気配もなく背後に回られていた。
「お前は誰だ!?」
「なに、怪しい者ではない。
お前らが召喚僧ならば、お前らの味方だ。」
「信用できるか!
ーーーーーー仏説観無量寿経ーーーーーー」
僕は、スキンヘッドの男の煩悩を感じ取ろうとした・・・
「何だ、こいつ・・・」
「どうかしたの?」
「沙羅、こいつからは全く煩悩が感じられない・・・」
「そんな、じゃあこいつが召喚僧だとしたら・・・」
ーー「そうだ、俺は召喚僧だぜ。
ついでに、スキンヘッドとは聞こえが悪い。
由緒ある、坊主頭だぜ。」
「・・だ、だれもスキンヘッドなんて言ってないだろ。」
ーー「残念だったな。あいにく俺は人の心が読めちまう。
俺の前で下手なことを考えないことだな。」
「心が読める・・・
やはり、かなりのやり手だ。」
ーー「お前らもこの合戦を沈めたいようだな。
ならば、少し手伝って欲しいことがある。」
「・・・・どうする、沙羅?」
「こいつが召喚僧なのはまず間違いない。
こうしているのも、心を読まれているなら下手なこともできない。
ここは協力しましょう。」
「わかりました。手伝いってなにをすればいいのですか?」
「なぁに、俺の回りにいてくれればいい。」
そう言って、彼は地面に座り込んだ。
「こいつ、なにしてるんだ?」
「・・・もしかしてこれって、【座禅】?」
しばらくすると、彼の回りに結界が現れた。
そして彼は目を開き、召喚魔術を唱えた。
ーーーーーー「大正新脩大蔵経」ーーーーーー(たいしょうしんしゅうだいぞうきょう)
すると、合戦を繰り広げていた集団の動きが止まった。
動かないのではない、動けないのだ。
「これで動けまい。
ゆっくりと狩らせてもらう、お前らの煩悩・・・」
結界から召喚魔獣が現れ、50人ほどの煩悩をいっきに狩りとった。
「こいつ・・・強すぎる・・・・・」
僕らは5、6人の煩悩を喰らうのが限界だったが、彼は一瞬でその10倍もの煩悩を狩った。
「【大正新脩大蔵経】(たいしょうしんしゅうだいぞうきょう)少しマニアックだが、禅宗のお経だ。そして、座禅を組んだところから見て、禅宗なのは間違いないだろう。」
恐るべき力だった。
僕たちはその場に立ち尽くした。