第一期--No.8 地獄寺~新たな魔術~
僕の数珠の輝きは13個になった。
これで呼び寄せることのできる召喚魔獣は13体。
僕たちは、死体にもう一度手を合わせ、地獄寺を去ろうとした。
―――「おいおい、まだこんな所に、若いのが二人いるじゃねぇか。」
地獄寺の奥から、とても低い声の男が現れた。
彼は、血塗られた刀を2本握っていた。
「この寺を潰したのはお前か!」
「そうだ、俺は一人でこいつらを殺した。
お前ら二人なんて、虫けらみたいなもんだぜ。
逃げるなら今のうちに逃げな。」
「誰が逃げるか!
これだけの人を殺されて、黙ってはいられない!!
速攻で片付ける!!」
僕は、いきなり召喚魔術を使った。
ーーーーーー「南無阿弥陀仏」!!ーーーーーー
敵の目の前に、召喚魔獣が現れた。
「俺をなめてもらっちゃ困るぜ。」
その男は、召喚魔獣の一撃をひらりとかわした。
「早い!!」
2本の刀を持って、とても俊敏な動きをしてきた。
「遅いぜ。」
気がつくと、背後に回られていた。
「うっ・・・」
肩を切りつけられた。
「圭秀!!」
沙羅が近づく。
「沙羅、危ない!!」
僕は、沙羅を突き飛ばした。
「うわっ!!」
次は、右腕を切りつけられた。
立ち上がるが、そこにはもう男の残像しか見えない。
「なんてスピードだ・・・
だけど、こんなにも多くの人を傷つけたことは絶対に許さない!!」
すると、突然数珠が光り出した。
成仏した時の輝きとは少し違う。
「なんだ、これは?」
「それは、新たな魔術よ!
魔術を唱えなさい!!」
ーーーーーー「仏説観無量寿経」ーーーーーー(ぶっせつかんむりょうじゅきょう)
僕が目を開くと、さっきまで見えなかった敵の動きが手に取るようにわかった。
「ここだ!!」
僕は、4時の方向に召喚魔獣を召喚した。
召喚魔獣の攻撃は見事に命中し、敵から煩悩が抜けていった。
「新しい召喚魔術ね。
どういう効力なの?」
僕はまだ、何が起こったか、正確には理解できなかった。
「敵の動きが見えたんだ。
敵というか、黒いオーラが・・・」
「【仏説観無量寿経】それは、私の推測からして、煩悩を感じとる能力。
敵の位置がわかったというより、相手の煩悩を感じ取ったのね。」
「なるほど。」
「自分の能力ぐらい、自分で感じなさいよ。
まあ、これで新しい召喚魔術を使えるようになったわけだし、
のんびりもしてられないわ。
その魔術は戦いで身につけていくことね。」
「え、もう出発するのかよ。」
「当たり前でしょ。」
でも、沙羅の表情はいつもより嬉しそうだった。
僕は自分の数珠を見た。
輝きはあと11個。
「そうだな、のんびりもしてられない。」
僕は新たな魔術を手に入れて、村の中心部へと急いだ。