表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寺の坊主の召喚魔術  作者: Suzurann
第一章 仏教魔術
7/19

第一期--No.7 地獄寺~成仏する魂~

次の朝、僕が起きるともうすでに沙羅さらは起きていた。


「起きたか。

じゃあ、準備をしろ。出発するぞ。」


「もう行くのですか?」


「当たり前だ。争いが広がってしまう。

今日は2人になったから、村の奥まで入って行こう。

・・・実は、1人では少し入りづらかったのだ。

だが、二人ならば怖いものはない。」


沙羅は意気込んで歩き出した。



――「前日までは威勢のいいやつらがたくさんいましたが、今日はやけに静かですね。」


「もうすでに、戦いの場は村の中心部に移動したというのか。」


「急ごう。」


二人は村の中心部へ急いだ。



「もう少しで広い道に出るぞ。」


「ねぇ、ちょっと待って。」

急に、沙羅が足を止めた。

「どうした?」


「山のほうに小さなお寺が見えるわ。」


「それがどうした。」


「あの寺・・・何かを感じる・・・」


沙羅は、引き寄せられるように寺のほうへ走って行った。


「おい、ちょっと待てよ!」


僕は、急いで彼女を追いかけた。



彼女は寺の前で止まった。

「・・・・・・」

僕たちは言葉を失った。


寺の形は残っていたものの、門やふすまは焼き払われており、何より異様な匂いが漂ってくるのである。


「この匂い・・・」


「ああ、死体だろう。それもかなりの人数。」


かろうじて、寺の前の石碑が残っている。


『地獄寺』


石碑には深く、その3文字が刻まれていた。


僕たちは恐る恐る中に入った。



「なんだよこれ・・・・・」


パッと見ただけでも、30から40人の死体が転がっていた。

血の匂いとその姿に僕は口を押さえてしまった。


「僧侶がそんなんでどうする。

死体なら飽きるほど見てきただろう。」


「・・・でも、見るたびに思うんだ。

この人はどんな思いで死んでいったのかな、この人は喜んで浄土へいかれただろうかって・・・

だけど、これは酷すぎる!

この人たちは喜んで浄土にいけるはずがないよ!!」


「それを浄土に導くのがお前の仕事じゃないのか?」


「そうだね・・・」

僕は静かに手を合わせた。


――「・・・お前たち・は・・僧侶か?・・・」


「圭秀、こっちの人はまだ息があるよ!」


僕は、沙羅がいるほうを見た。

もう身体はボロボロだ。

もう生きているのが不思議なくらいの状態だった。


ボロボロの男性は、胸を押さえながら口を開いた。


「私たちはもう駄目だ。

この村も、いずれ滅びるだろう。

そうなる前に、どうか争いを止めてくれ・・・

村の中心部には、妻と子もいるんだ。」


「安心してください。

僕たちが必ず争いを沈めて見せます。」


「ありがとう・・・・・」


男性は静かに目を閉じた。


「なんでこんな酷いことを・・・

人は煩悩という欲を決して満足させることができない。

そこには求めて得られない苦しみがあり、満足できないときには、気も狂うばかりとなる。


人は欲のために争い欲のために戦う。

人々はこの欲のために狂わされて互いに殺しあう。


そこで得るものはなにもないというのに・・・


また、多くの犠牲が出てしまった。

ここで経を唱えるのがせめてもの償い・・・」


僕は手を合わせ、涙ぐみながら経を読んだ。


ーーーーーー

すると、死体から光りの粒が溢れ、数珠が光り出した。


「これは一体?」


「きっと、彼らが成仏していったのだ。」


僕の数珠を見ると輝きが増えていた。

残っていた1つと合わせて、13個。

13体の召喚魔獣を召喚できるようになった。


「13体か・・・」


「どうした?

あと1つだったお前にとってはとても良かったではないか。」


「ここにあった死体は軽く30はあった。

しかし、13体・・・」


「しかし・・・」



「必ずや争いを沈めて見せる。」



僕は13個の輝きを得た数珠をしっかりと握りしめた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ