第一期--No.7 地獄寺~成仏する魂~
次の朝、僕が起きるともうすでに沙羅は起きていた。
「起きたか。
じゃあ、準備をしろ。出発するぞ。」
「もう行くのですか?」
「当たり前だ。争いが広がってしまう。
今日は2人になったから、村の奥まで入って行こう。
・・・実は、1人では少し入りづらかったのだ。
だが、二人ならば怖いものはない。」
沙羅は意気込んで歩き出した。
――「前日までは威勢のいいやつらがたくさんいましたが、今日はやけに静かですね。」
「もうすでに、戦いの場は村の中心部に移動したというのか。」
「急ごう。」
二人は村の中心部へ急いだ。
「もう少しで広い道に出るぞ。」
「ねぇ、ちょっと待って。」
急に、沙羅が足を止めた。
「どうした?」
「山のほうに小さなお寺が見えるわ。」
「それがどうした。」
「あの寺・・・何かを感じる・・・」
沙羅は、引き寄せられるように寺のほうへ走って行った。
「おい、ちょっと待てよ!」
僕は、急いで彼女を追いかけた。
彼女は寺の前で止まった。
「・・・・・・」
僕たちは言葉を失った。
寺の形は残っていたものの、門や襖は焼き払われており、何より異様な匂いが漂ってくるのである。
「この匂い・・・」
「ああ、死体だろう。それもかなりの人数。」
かろうじて、寺の前の石碑が残っている。
『地獄寺』
石碑には深く、その3文字が刻まれていた。
僕たちは恐る恐る中に入った。
「なんだよこれ・・・・・」
パッと見ただけでも、30から40人の死体が転がっていた。
血の匂いとその姿に僕は口を押さえてしまった。
「僧侶がそんなんでどうする。
死体なら飽きるほど見てきただろう。」
「・・・でも、見るたびに思うんだ。
この人はどんな思いで死んでいったのかな、この人は喜んで浄土へいかれただろうかって・・・
だけど、これは酷すぎる!
この人たちは喜んで浄土にいけるはずがないよ!!」
「それを浄土に導くのがお前の仕事じゃないのか?」
「そうだね・・・」
僕は静かに手を合わせた。
――「・・・お前たち・は・・僧侶か?・・・」
「圭秀、こっちの人はまだ息があるよ!」
僕は、沙羅がいるほうを見た。
もう身体はボロボロだ。
もう生きているのが不思議なくらいの状態だった。
ボロボロの男性は、胸を押さえながら口を開いた。
「私たちはもう駄目だ。
この村も、いずれ滅びるだろう。
そうなる前に、どうか争いを止めてくれ・・・
村の中心部には、妻と子もいるんだ。」
「安心してください。
僕たちが必ず争いを沈めて見せます。」
「ありがとう・・・・・」
男性は静かに目を閉じた。
「なんでこんな酷いことを・・・
人は煩悩という欲を決して満足させることができない。
そこには求めて得られない苦しみがあり、満足できないときには、気も狂うばかりとなる。
人は欲のために争い欲のために戦う。
人々はこの欲のために狂わされて互いに殺しあう。
そこで得るものはなにもないというのに・・・
また、多くの犠牲が出てしまった。
ここで経を唱えるのがせめてもの償い・・・」
僕は手を合わせ、涙ぐみながら経を読んだ。
ーーーーーー
すると、死体から光りの粒が溢れ、数珠が光り出した。
「これは一体?」
「きっと、彼らが成仏していったのだ。」
僕の数珠を見ると輝きが増えていた。
残っていた1つと合わせて、13個。
13体の召喚魔獣を召喚できるようになった。
「13体か・・・」
「どうした?
あと1つだったお前にとってはとても良かったではないか。」
「ここにあった死体は軽く30はあった。
しかし、13体・・・」
「しかし・・・」
「必ずや争いを沈めて見せる。」
僕は13個の輝きを得た数珠をしっかりと握りしめた。