第一期--No.5 新たな仲間
魔獣が消えると、僕の数珠の輝きも消えた。
これで輝きはあと1つ。
しかも、喰らうことのできる煩悩は5、6人ぶんだ。
輝きが尽きた時に、僕は・・・
できるだけ召喚魔術は温存しておきたい。
争いが広がる前に、止めなければ。
僕は村の奥へと進んでいった。
しばらく歩くと、殺風景な場所にたどり着いた。
すると、遠くで男の叫び声が聞こえた。
僕は声のした方へ走った。
―――「動くな!!」
走り出したとたんに、銃を持った男に背後を取られてしまった。
「銃も使うのかよ!!・・・」
僕は仕方なく、手を上げて止まった。
「また1人捕まえたぜ。」
「おう、おう若い者がこんな所にノコノコと。」
奥の小屋から10人近くの男が現れた。
しかも、全員銃を持っている。
「こんなに多くの人を相手に召喚魔術を使うことをは出来ない・・・
それに、こんな殺風景な場所で銃を使われたら逃げられるわけがない。
ここは説得してもらうしかない・・・」
僕は静かに口を開いた。
「僕は君たちの敵ではない。」
「今は、敵だの味方だの言ってられねーんだよ!」
駄目だ、こんな人数に囲まれていたら、いつ誰に発砲されてもおかしくない。
下手なことを言うわけにはいかないな・・・
「お前は僧侶か?」
男の一人が尋ねてきた。
「ああ、そうだ。」
「だが、残念だったな。
今は僧侶だからといって、見逃せるような時代じゃないんだ。」
「そうか、だがお前たちに害を加えるつもりはない。」
「だから、そんな言葉で信用できる時代じゃないって言ってるんだよ!」
「そうか・・・
なら、どうしてお前たちは一緒にいるのだ?
なぜ、隣に銃を持った男がいて黙っていれるのだ?」
「そりゃあ、こいつらは・・仲間だから・・・」
「信用できるのか?
次の瞬間には、その銃で殺されるかもしれないのだぞ。」
「うるさい!!
お前に俺たちのことなんかわかんねーよ。」
「・・・怨みは怨みによって果たすことは出来ない。
忍を行じてのみ、解くことができる。
己の感情のままに行動しても、何も解決はしないぞ。」
少し間があいて、一斉に銃口が僕に向けられた。
「いつの時代も坊主は同じだな。
放って置けば、わけのわからんことをブツブツと。
言葉で解決できれば、誰も苦しまねーんだよ!!」
一人の男が引き金を引いた。
銃の先から煙が見えた。
「終わりだ・・・」
僕は死を覚悟し、目をつぶった。
―――「法華三部経」ーーーーーー
終わりだ!!
ーーー「南無妙法蓮華経」ーーーーーー
僕が目を開けると、一人の少女が立っていて、
銃を持った男たちは倒れていた。
「あなたは?」
僕は小さな声で尋ねた。
「私は雨宮 沙羅だ。
おそらく、君と同じようにしてこの世界にやって来た。」
「あの、さっきの召喚魔術は、
日蓮宗ですよね?」
「ああ、今は宗派がどうとか言ってられない。」
僕は彼女の持っている数珠に目をやった。
「あなたも召喚僧ですか?」
「ああ、そうだ。
もちろん、目的も君と同じだ。
ならば、一緒に協力しませんか?」