第一期--No.3 旅の始まり
「南無阿弥陀仏」
僕が手を合わせると、目の前にいた僧侶は光りの粒となって消えて行った。
「えっ・・・」
僕は焦った。しかし、すぐにどこからか声が聞こえてきた。
「ありがとうございます。
あなたのおかげで、私は成仏することができました。
それと同時に、あなたは召喚僧になりました。
あなたの召喚魔術は【南無阿弥陀仏】。
それを唱えることで、私を呼び出すことができます。
この世界ではもうじき争いが起こります。
それを止めるのが私たちの使命です。
それを忘れないで下さい・・・」
声が遠くなっていき、やがて聞こえなくなった。
「争いを止める?」
この世界が何なのかもわからぬまま、僕の冒険は始まってしまった―――
「だが、少しずつ分かってきたぞ。
人々の煩悩を、召喚魔術を使って抑えればいいのだな。
しかし、そう多くの煩悩を喰らうことはできない。」
遠くの山のふもとに、小さな村が見える。
僕はまず、人々のいる村に向かうことにした。
「しかし、見れば見るほど地球と同じような世界だ。」
回りの木々を見ながらそう呟き、前へと進んでいった。
もうじき、村に着くという所で
白髪でボロボロの服を着た老人が倒れているのを見つけた。
「大丈夫ですか?」
僕はあわてて老人に近づいた。
「お主は僧侶か・・・
この先の村ではすでに争いが起こっておる。
若い者が来るべき所ではない。」
・・・その老人は、僕のことをじっと見つめた。
「その数珠は・・・!?」
老人は僕が持っていた数珠を指差した。
「数珠のたまが輝いている・・・
お主は召喚僧・・・」
自分でも気が付かなかった。
確かに、僕の数珠のたまは1つだけ輝いていた。
「数珠の輝きは召喚魔術の数を表している。
その輝きが尽きた時、お主は消える。」
「そうなのですか?」
「ああ、昔に聞いたことがある。
その召喚僧は争いを沈めたと・・・
だがお主の召喚魔術は1つ。それじゃあ、今の争いを止めることはできぬ。」
「ですが、僕は仏の教えがあれば、争いを沈めることができると信じています。」
「面白い奴じゃ。
私もわずかじゃが、お主の力になろう。
お主のような奴に出会えてよかったわい。」
老人は、光りの粒となって消えた。
僕の数珠を見ると、輝きが2つになっていた。
「これで、お主の召喚魔獣は2匹。健闘を祈るぞ。」
僕は、急ぎ足で村へと向かった。