第一期--No.16 終わりに向かって
僕たちは、甲府軍の城へ向かった。
甲府軍の城は、山のむこうに見えていた。
「急ぐぞ。
おそらく、その場所に2つの全勢力が集まってぶつかり合うだろう。
その場所で、争いを完全に止める。
これ以上犠牲者を出すわけにはいかない。」
「ああ、わかっている。」
僕は煩悩を感じ取ると、沢山の煩悩が集まっていくのを感じた。
「煩悩が集まっている。
おそらくあそこが甲府軍の城。
あの場所で争いが始まる。」
僕たちは走っていった。
ーーーしばらく走ると、城の前に出た。
いや、前ではない、城の裏側だ。
正面の方には、馬に乗った兵士が集まっていた。
「もう、2つの勢力がぶつかり始める・・・」
「ここで、2手に別れましょう。
私と祥雲は正面に行って、松山軍を止める。
圭秀は裏側から城に入って、甲府軍を、甲府軍の将軍を止めてほしい。」
「なるほど、沙羅の防御魔術があれば、正面の勢力を止めるのもそう難しくはないかもしれない。
しかし、2つの勢力がぶつかってしまい煩悩が大きくなれば、そうもいかなくなる。」
「頼んだわ、圭秀!」
「一人で無茶はするな。足止め程度でもかまわない。」
「おう、任せて!!」
僕は裏側から城に潜入した。
≫≫≫≫≫≫≫≫
城の中は松山軍の奇襲に動揺していて、裏側からの進入も容易だった。
城の中の兵士のほとんどが城の外へ出てしまっている。
「さすが、対応が早いな。」
すると、上の階から4人の兵士があわただしく降りてきた。
ーー「将軍様だけはお守りしろ!!」
「争いには参加させない!
ーーーーーー南無阿弥陀仏ーーーーーー」
僕は、召喚魔術を唱えて4人の兵士の煩悩をを後ろから喰らいとった。
「ふん、よっぽど慌てていたな。
ここまで簡単に喰らい取ることができた・・・」
ーーー「おい、お前らどうした?!」
更に上の階からもう一人の男が現れた。
ーー「将軍様・・・」
先程倒した兵士はそう言い残して意識を失った。
「ふん、こいつが将軍か。」
僕は召喚魔術を唱えようとした。
しかし、少し様子がおかしい。
「・・・お前、召喚僧か?
前に聞いたことがある。・・・お願いがあるんだ。
俺の煩悩を・・・押さえてほしい・・・」
「なんだよ?将軍のくせに、らしくない。
押さえてほしいってどういうことだよ。」
「俺は、争いなんて望んではいない。
だが、俺の煩悩は強力だった。煩悩に操られてこんなことに・・・
今なら、煩悩が弱ってきてる。どうか俺の煩悩を・・・」
「任せてくれ。争いを止めるのが、僕の役目だ!
ーーーーーー南無阿弥陀仏ーーーーーー」
召喚魔術を唱えて、将軍の煩悩を喰らいとった。
召喚魔獣は消えてしまった・・・
しかし、将軍の様子がおかしい。
将軍には黒いオーラがまだ残っている。
その黒いオーラは実体になって現れた。
ーー「将軍め、余計なことを・・・
こいつの体に入り込んだのは良かったが、おかげで半分程度
の俺様を喰らい取られちまった。」
「こいつ、煩悩の本体か。」
ーー「ああ、そうだぜ。
俺の兄貴もいるぜ。あいつは松山軍の将軍に乗り移った。
2つの軍の将軍を操って、この村を潰そうって戦法よ!」
「なに?!
そういうことか。」
ーー「おっと、口がすべっちまった。
まあいい、お前はここで死んでもらう。」
煩悩は僕に襲いかかってきた。
しかし、急に動きが止まる・・・
「今だ、俺の中の煩悩を喰らいとってくれ。」
将軍は自分自身の体を押さえつけていた。
「よし!!
ーーーーーー南無阿弥陀仏 改 <双頭龍>ーーーーーー」
新たな召喚魔術だ。
今までよりも、大きな召喚魔獣が現れた。
その魔獣の首は2つ。
2つの首の魔獣は将軍の煩悩を完全に喰らいとった。
黒いオーラが消えた。
それと同時に数珠の輝きは2つ消えて残り2つ。
最後の輝きを使うと自分自身も消えてしまうことを考えると使える召喚魔術はあと1つ。
煩悩を抜き取られた将軍は、ふらつきながら立ち上がった。
「お前、まだ煩悩が?!」
「いや、俺にはもう煩悩はない。
俺は将軍だ。最後までこの争いに落とし前をつける。」
「ふん、煩悩を抜き取られて立っていたのは将軍が初めてだ。
さすがだな。これでこそ将軍の姿だ。
敵ながらあっぱれだ。」
「いや、もう敵ではない。
俺も、一緒に行かせてくれ。」
「ああ、正面には僕の仲間もいる。
急ごう。」
甲府軍の将軍を救い、2人で沙羅たちのもとへ向かった。




