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僕の初恋  作者: HELIOS
8/9

少年は夢を取り戻す

子供が生まれてからはあっという間だった気がする。

退院してから役所に出生届を出して、家に帰ると義母と義父が大喜びで息子を抱いていた。

2人もまさかこんなに早く孫が出来るとは思っていなかったんだろうな、と思った。

職場の先輩達に息子の写真を見せたりもした。

女の子じゃなくて良かったなと言われた。

女の子は後々大変らしい。


それから5年、息子は4歳になり、幼稚園での出来事を話してくれるようになっていた。


10月の下旬、職場で同僚達がモーターショーの話しをしていた。

妻と結婚して以来、車から離れていた僕はあまり関心がなかった。

なんでも話題の新車が発表されるそうだ。

昼休みにテレビの生放送をやるらしいので僕も見る事にした。

そしてテレビに映し出されたエンブレムに、僕は見覚えがあった。

壁が開き、その車が姿を現した。


日産GT-R


GT-Rの新型だった。


その新型GT-Rを見た瞬間、僕の中に何かが蘇った気がした。

あの頃、あんなに憧れていた車。

どうしても手の届かなかった車。

僕の初恋の車。


GT-R


その後の事はあまり覚えていない。

気が付いたら家に帰っていて、妻が僕にどうかしたのかと問いかけていた。

僕は自分がどうしたら良いのか分らなかった。

でも、この気持ちを妻に伝えたかった。

「欲しい物があるんだ・・・」

「欲しい物・・・?珍しいわね?」

「どうしても欲しいんだ、昔から、ずっと・・・・」

「そんなに?何なの?」

「僕の初恋相手」

「は・・・・?」

「人じゃなくて車だけど・・・」

「び、びっくりさせないでよ・・・」

「どうしても・・・・」

「・・・・・・・わかった、買ってもいいわよ」

「ほんと?」

「貴方、私達の為に今まで頑張ってくれたんだもん、ご褒美にね」

「ありがとう」


週末、僕は妻と息子を連れてこの地域でもっとも大きい中古車専門店へ向かった。

キョロキョロしていると、店員に話しかけられた。

「何かお探しですか?」

「はい、GT-Rなんですけど・・・」

「はい、少々お待ちください」

店員は店の中に入って行き、数分後に戻ってきた。

「お待たせいたしました、こちらです」

店員に案内され、僕らはスカイラインのコーナーへ向かった。

「こちらの奥になります」

僕はスカイラインの列の奥に向かった。

そこには、僕の初恋相手が居た。

「やっと見つけた・・・・・」

ガングレーメタリックのR32GT-R

幼い僕の心を鷲摑みにした車・・・・

放心状態の僕に妻が問いかける。

「この車?」

「ああ・・・」

僕が値段を見ると、ワンオーナー150万円だった。

まるで当時からタイムスリップしてきたみたいに綺麗なのに・・・

「あ・・・この車は・・」

「どうしたんですか?」

「いえ、この車、以前のオーナーさんが亡くなっているんです・・・」

妻は少し気持ち悪がっていた。

しかし、僕は違う事を思った。

キミの前のオーナーはとても大事にしてくれる人だったんだな・・・・・

僕の中で答えは決まっていた。

「この車、下さい。」


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