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僕の初恋  作者: HELIOS
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少年は想いを背負う

僕は気が付くと目の前に妻が涙目で座っていた。

どうやら妻のベッドで寝ていたらしい。

妻は僕に傷む所はないかと聞いてきたので特に無いと答えた。

本当は口の中が石榴みたいになっていたし、蹴られた腹も痛かったが妻に心配させないための精一杯の強がりだった。


少しするとドアからノックの音が聞こえ、妻が返事をすると叔父が部屋に入ってきた。

叔父は僕を見るなりいきなり土下座し始めた。

「この度はウチの愚息がとんでもない事を!本当にすまなかった!!」

僕は混乱してしまったが、とにかく頭を上げてもらった。

叔父は頭を上げると僕の顔を凝視していた。

僕は状況が把握できなかったので、叔父に説明を求めた。

どうやら叔父はあの後妻の従弟を殴り倒して説教し、何故あんな事をしたのかを問い詰めたのだという。すると、妻の従弟は昔から妻に好意を抱いていたのだと言う。10年来の思い人を誰とも知らない男に奪われ、腹にはその男の子供までいると知り、手が出たと言う事らしい。


叔父は只管僕に謝り続け、僕と妻には二度と息子を会わせないと言っていたが、僕は別のことを考えていた。


僕は、妻の周りの人たちに迷惑を掛けているのだな。

妻の両親、妻を想う人達に。

僕は改めてそう思った。


もし僕が軽率な行動をしなければ妻は今まで通りの生活が出来ていた筈だ。

妻の周りの人達にも迷惑を掛けずに済んだはずだ。


もし僕が妻と出会わなければ、妻はもっと違う人生を送れていた筈だ。


全ては僕が原因で、全ては僕に責任がある。



僕は、背負う事になるのだ。


責任を


想いを


家族を


こんな事、妻に話したら何て言われるか分らないから、僕はこの思いを心に刻み込んだ。

僕は、今だけを見る事にした。

僕の人生全てを使って、これから生まれてくる子供と妻を幸せにする事だけを考えよう。


それから1ヶ月後、僕らの結婚式が執り行われた。

妻の友人や親戚、僕の友人や親戚が集い、僕らの事4割、世間話6割位で盛り上がった。

でも、妻の叔父達は出席していない。招待したけど、会わせる顔が無いと断られてしまった。

妻も僕も残念だったけれど、あんな事があった手前、義父に会うのも辛いだろう。

それでも、最初で最後の妻のウエディングドレス姿はとても綺麗だった。

見慣れている妻だけれど、思わず見惚れてしまった。

「まさかこんなに早くコレが着るなんて思わなかったな・・・」

「え・・マリッジブルー?今更止めたいなんて言わないでよ??」

「バカ、もう籍入れてるでしょ?マリッジブルーとかじゃなくてね、本当にうれしいの。

こんな綺麗なウエディングドレスを着る事が出来て、隣に貴方が居て、お腹に赤ちゃんが居て・・・・・なんか、幸せが全部一度に来たから、何て言ったら良いんだろう・・・分んないや」

「そっか・・・でも良かった、結婚式中止ー何て言われたらどうしようかと・・」

「はぁ・・・私は今更そんな事言っている旦那様をどうしたら良いのかと・・・」


「「・・・・・・・・・・・」」


「「ハハハ・・・!」」

僕らはお互いの顔を見合って笑った。


「さ、行こうか」


「うん!」


その後、妻は義父と共にバージンロードを歩き、僕の元に来て、定番の誓いの言葉と誓いの口付けを交わし、ブーケを投げて式は終わった。ブーケを掴んだのは僕の親戚の7歳の女の子で、「つぎのおよめさんはわたし!」と騒いでいた。妻は僕を見て「私達の子供もあんな風に元気に育つかな?」と呟いた。僕の答えは勿論。。。。。。








結婚式の3週間後、僕らは新居へ引越しをした。

4月からの僕の会社の近くの2LDKのマンションの5階だ。

最初は1DKで探していたが、結婚が決まり条件を変更した。

妻と荷物の箱出しや整理をしている最中、僕は妻に「悪阻とか大丈夫?」と聞くと、「もう収まった」と答えてくれた。しかし、あまり負担は掛けられないので当然家具の移動とかは僕が買って出た。

妻は「そんなに心配しなくても・・・」と言うけれど、もしもの事があったら大変なんだと説得して力仕事以外をしてもらう事にしていた。


翌日は大学の卒業式だった。

妻の友達は少し膨らんできた妻のお腹を撫でたりしていた。

色々質問攻めにもあっていたな。

僕もその間、友人と話したり、卒業に失敗した先輩に冷やかされたりしていた。

大体「上手いことやったな!」とか「子供が生まれたら抱かせてくれ」とかが多かったな。

式の後、僕と妻は学内キャンパスを散歩していた。

4年・・いや、実質3年半通ったキャンパスだけに思いでもそれなりにある。

僕と妻は、3年前にここで出会い、付き合い始めて、結婚した。

二人でよく来た学食、皆で集まった中庭。それともお別れだ。

妻は名残惜しそうだったけれど、僕はそうでもなかった。


過去の思い出よりも未来の事を想っていたから・・・・・・・

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