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僕の初恋  作者: HELIOS
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少年の夢は覚めていく

僕はそれから32GT-Rのミニカーを集めるようになった。

今はまだ本物は買えないけれど、少しでも32GT-Rを身近に感じていたかったから。

お小遣いは全てGT-R関連のグッズや雑誌に消えた。


しかし、中学3年になる頃にはそうもいかなくなった。

僕は世間一般で言うところの受験生と言うやつになっていた。

周りは1学期からピリピリした雰囲気になり、僕も同じようにピリピリし始めた。

僕の成績は良くも無ければ悪くも無い、しかし、ほんの少しのミスで中の中から下の上に落ちる可能性もあった。だから僕は周りの波に乗るように勉強し始めた。

雑誌を買いに行っていた本屋には参考書や受験対策誌を買いに行くようになり、部屋に飾っていたGT-Rのミニカーは埃を被る様になった。

その頃から僕の頭の中から少しずつ、少しずつGT-Rの事が消えていった。


次の年の春、僕は受験に勝ち残り、高校生になっていた。

その時にはもうGT-Rの事は頭の中から消えていた。


高校生になると、楽しい事が増えてくる。

友達と遊んだり、彼女を作ったり。

僕は今まで女の子と親しくなる機会が少なかったからこれがすごく新鮮だった。

友達に誘われた合コンもすごく楽しくて、そこで知り合った女の子と付き合うようになった。

付き合うようになってからは毎朝の登下校、休日はほとんど一緒にいるようになった。

世間一般的な高校生ライフを満喫していたある日、彼女が家に遊びに来た。

親には部屋に入るなと釘を刺すのも忘れない。

部屋に入ると彼女はあるものに目を留めた。

「ねぇ、このミニカーってなんの車?」

彼女の指差した先には少し埃っぽいGT-Rのミニカーが有った

「GT-Rって車だよ」と僕は答えた

「へぇ~車好きだったんだ?」

「いや、そうでもないんだよね。でもなんかその車だけは好きなんだ」

「ふぅ~ん。免許取ったらこの車買うの?」

「まさか、高くて手が出ないよ」

「いくら位するの?」

「中古でも400万以上するんだよ」

「た、高いね・・・」

「うん、もう半分諦めてんだ」

「え~夢が無いな~」

「もし僕が仕事に成功したら自分へのご褒美にね」

「がんばって」

「おう」

その後、彼女と他愛も無い話をしたりして、彼女を家まで送っていった。

その帰り道、ふと僕は思った。

いつからあの思いは無くなってしまったのかと。

受験で忙しかったから?高校生活が楽しいから?彼女の方が好きだから?

たぶん全てだろう。

人間、手の届かない物を追い続けるより、手の届く幸せを手にして満足してしまうのだろうか。

僕は考えるのを止め家路に着いた。




それから2年が経ち、僕は18歳になり、車の運転免許を取得していた。

子供の頃あんなにも欲しかったのに、実際手にしてみると感動も何も無い。

僕は中学と同様に大学受験前で勉強に明け暮れる日々を送っていた。

彼女は親の転勤で引っ越してしまい自然消滅したから勉強とアルバイト以外する事が無かった。

学校が終わったらバイトに向かい、家に帰ったら勉強する。ただそれの繰り返し。

何か新しい刺激が欲しいとも思わないけれど・・・・


それから数ヶ月して、僕は大学生になった。

この年になるともうワクワクしたりもしなくなっていた。

同じ学部に友達も出来て、一緒に遊ぶようになり、友達の彼女に友達を紹介してもらい、ひたすら口説いて付き合うようになった。よく4人で遊びに行くようになり、夏には友達のシルビアで海に行った。

その頃から、少し車が欲しくなっていた。有れば便利だな程度にだが。

季節が秋になり、少し寒くなってきた頃、家が少し遠い彼女は冷え性と格闘しながら大学に来るようになった。そして「車でもあれば楽なんだけどな・・・あ、でも私免許無いや」と零していた

そこで僕はふと思った、通帳に高校時代からバイトで貯めたお金がある。

バイトに行く前に通帳を確認すると130万円ほど貯まっていた。

特に目的があったわけでもない。なら・・・・・


次の週末、僕は中古車屋を訪れていた。

彼女を乗せて一緒にドライブできる車を探しにだ。

駐車場は家にあるから問題は無かった。親も自分で稼いだ金なら好きにしろと言ってくれた。

予算は80万円以内、なるべく綺麗で長く乗れる車を探す。

友達が乗っていたのと同じシルビアも見つけたが少し高い・・・

その奥にはスカイラインが並んでいた。

R30型から順に並べられていた。

僕は更に奥に目が行った。

そこには、初恋相手のR32GT-Rが有った。

僕は思わず唾を飲んだ、憧れだった車を前に緊張していたのかもしれない。

しかし、価格は僕を現実に引き戻す。320万円は完全に予算オーバーだ。

溜息をつきながら横に目をやると、R32スカイラインタイプMがあった。

GT-Rのベースになった車で、901運動(当時、日産は1990年までにシャシー性能世界一を目標にしていた)でGT-Rに次いで第2位の性能を与えられていた車だった。

そのブルーのタイプMは78万円で、GT-Rのバンパーが装着されていた。

少し悩んで僕は購入を決めた。


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