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「警部」  作者: ジム・プリマス


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「警部」9~10 及川女史の手柄


及川女史の手柄


 意外なところに綻びが見つかった。都心の貸しビルの前に落ちていた、ラッキーストライクの吸い殻から、劉の唾液が検出されたのだ。

 安藤君のライブカメラを、及川女史が、たまたま監視していて、目敏く吸い殻が捨ててあると、タバコ嫌いの彼女が憤慨して、拾って然るべき場所に、捨てるように命令したのを、安藤君がサンプル袋に入れて本部に持ち帰って、ご丁寧に鑑識に回したのだった。

 貸しビルの付近についていたタイヤ痕から、二人が乗っている車の特定がされた。

 スバル工業の水平対向水素エンジンを搭載した10年落ちのBRZの2055年モデルだった。そこまで分かった時点で、二人の乗った車両の位置を割り出すのは容易だった。

 量子ハッキングが仇になった。都心ネットワークの車両監視カメラの中から、運転席と助手席に誰も映っていない2055年モデルを探すだけで良かった。

 早速、高速スタンド・アローンAIドローンを三機、配備して、高高度からの24時間監視を開始した。

 監視三日目で、二人のセーフハウスと、組織のアジトと思われる廃工場と、組織の事務所らしき貸しビルを特定し、その三か所に、ソーサローンの50口径ライフルを装備した狙撃班を配備して、1キロ以上のアウトレンジからの、熱カメラを使った、監視業務にシフトすることになった。

 ソーサローンの50口径ライフルなら1キロ先のメロンが狙える。貸しビルやマンションの外装なら50口径なら楽に貫通するだろう。ただの殲滅なら、話は、はやいのだが、そうはいかない。


10

 劉と非の行動監視が始まってから、私がつくづく感じたのは二人とも中国人だということだ。喫煙のマナーは最悪だった。彼らは車を運転する時も食事をするときも、どこだろうとタバコに火を付け、吸い殻をどこにでも捨てた。まあ、その結果、二人の居場所と行動を把握、出来たのだから幸いと言えるのかも知れない。

 ここまで二人を追い詰めたのだが、SATの本部を巻き込んで、大掛かりな作戦を立案して情報が洩れる方が心配だった。

 ここで霞君が思い切った提案をしてきた。劉も非もその能力は国際A級テロリストに匹敵するのだからそれを申請しておいて、陸自の特殊戦群の一部隊の派遣を可能にするというものだった。その上で少数精鋭で事に当たる。法学を大学で収めた霞君ならではの提案だった。

 私はその提案に賭けることにした。


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