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「警部」  作者: ジム・プリマス


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「警部」5~6 トメさん


トメさん


 突然、谷中のタバコ屋のトメさんから、電話がかかってきた。大麻タバコの売り上げが、最近、急に減ってきたというのだ。

 国産の大麻を配合した大麻タバコは、2029年に合法化され室内での喫煙に限って、販売が解禁されたが、国産の大麻は幻覚作用が比較的に弱く、犯罪とは縁が薄いので、愛好者が意外に多い。

 トメさんは、私がいつもアメリカン・スピリットをカートンで買うので、上得意として優遇してくれるのくれ、時々は有益な情報をくれることもある。

 情報と言ってもその大半は、世間話なのだが、こちらの身分が公安警察ということになると、煙たがられることが多いのだが、トメさんはご主人が12年前に亡くなった後家さんで,令和生まれの、色恋沙汰とは縁がなくなった年配の女性を相手と話すのは、気を遣わなくて気が楽なので、タバコを買う時に15分くらいトメさんと世間話をするのが常になっている。

 身体に気をつけるように言って、五分くらいで、携帯端末を切った後で、嫌な予感がした私は、警邏課けいらかの安藤君に一応、電話しておくことにした。


 安藤君は警邏課のバイク係で、個人用カメラとインカムを耳につけて、カッコいい制服を着て、マウンテン・バイクで街を流している。安藤君に連絡して、この7日の間に、もしかしたら、ブルー・ドラゴン(*1)の「劉」(*2)と「非」(*3)の二人の映像が映っていないか、バイク係の職員全員の映像の中から、該当する映像がないか、全記録の中からAIに吸い上げてもらえるように頼んで、いつものようにモンスター・エナジーを一箱30本、送っておいた。

 課長の及川女史には、必ず拳銃の携帯を遵守するように指導するように釘を刺しておいた。

 警邏課も警察官なので拳銃を携帯する決まりになっているが、だが安全を遵守するあまりに、薬室に弾を入れないで、安全装置をかけないように指導する管理官も多い。

 そうなると、銃を抜いた時、いちいち装填レバーを半回転させないと弾が出ないことになる。もしかしたらブルー。ドラゴンがまたぞろ、人工大麻製薬を市場に流しているのあれば、警官がトラブルに巻き込まれることは、十分、ありうることだ。

 警邏課の警官が携帯するのは、大羽工業がライセンス生産しているSIG-M2057の4インチで、全長が短い分、弾倉の装弾数は薬室分を除いて6発だ。

 全長が短い分、弾は50メートルで20センチくらいに広がる。市街地では、扱い辛いの否めないところだ。しかし警察官の命には代えられない。


(*1)ブルー・ドラゴン

 中国、台湾系の犯罪組織の一つ。

(*2)劉

 ブルー・ドラゴンの幹部、特に射撃に精通している。

(*3)非

 劉のボディーガード、ナイフを主に使う。


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