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第八章① 見知らぬ鉱石は夢を見る
アルシアは細やかな手つきで、磨き上げた石を光に透かした。
学院に入学したときに渡された石。フィオレンと研磨の練習をしてからずっとそのままにしていたのを、卒業試験の最中に、ふと思い立って削り磨き始めた。気づけば、形が見えてくる。
透明な結晶の奥に、まるで星雲のような輝きが宿っている。
(こんなに綺麗なものだったなんて……! フィオレンに見せたら、きっと驚くわ)
心が躍った。フィオレンにも見せたい。あの人なら、きっと価値を見極めてくれる。
工房へ向かった。けれど、フィオレンの姿はない。図書館にも、いつもいるはずの場所にもいない。
(どこに行ったのかしら)
不思議に思いながら、学院の廊下を歩く。外は陽が傾きかけていた。