第7話 名医の誕生
翌日、エミリアの宮廷医の任命式の当日。
「お着替え、お手伝い致します」
「ありがとうございます」
宮廷の侍女たちに着替えさせられる。
真っ白なドレスは医師の白衣を連想される。
「少し、派手じゃないですか?」
「いえ、すごくお似合いですよ。では、謁見の間に参りましょうか」
従者たちに案内されて、謁見の間の大きな扉の前に案内される。
そして、ゆっくりと豪華な扉が開かれる。
正面の玉座には陛下が深く座っている。
その隣に居るのはこの国の宰相で侯爵である。
赤い絨毯の両サイドには、王都に屋敷を持つ貴族たちが並んでいる。
その視線の全てが好意的なものでは無いと感じる。
エミリアは陛下の前で、片膝を付いて頭を下げる。
「面をあげよ」
陛下の声が謁見の間に響く。
その言葉で、エミリアは顔を上げた。
「余の命を救ってくれたこと、感謝する」
「いえ、医師として当然のことをしたまでです」
「貴殿がいなければ、余はもうこの世に居なかったことだろう。その功績を讃え、エミリア・メディを筆頭宮廷医師に任命し、医師功績一等勲章を授与する」
陛下の宣言に貴族たちからざわめきが上がる。
「謹んで拝命致します」
「これからも医師としての活躍を期待する。以上」
陛下が退席して任命式は終了する。
そこから、身分が高い貴族から順に退席して行く。
「エミリアさん、父上が話したいそうです」
退室したエミリアにサルヴァが声をかけてくる。
「分かりました」
サルヴァは黙ってエミリアを見つめている。
「何か変でしょうか?」
「いや、その、あまりにも綺麗だったので。思わず」
「褒めても何も出ませんよ」
「そういうつもりでは。綺麗な方は何を着ても似合うものだな」
褒められるというのは悪い気はしないものだ。
「すまない。父上が待っているのだったな」
「ですね」
サルヴァ殿下と共に陛下の待つ応接間へと向かった。
「やあ、宮廷医就任おめでとう」
応接間には既に陛下が座って待っていた。
「まあ、座ってくれ。おい、2人にもお茶を頼む」
「かしこまりました」
陛下の正面のソファーに腰を下ろす。
それと同時にお茶が置かれた。
「筆頭宮廷医師とは聞いていなかったのですが」
「サプライズってやつだな」
陛下は悪戯が成功した子供のように口角を上げる。
「いいんですか? こんな若輩で」
筆頭宮廷医師は宮廷医師団の中のトップだ。
いわば、この国最高の医者と言っても過言ではない。
「ブラット・メディの孫娘で私の命を救った英雄。若輩とは謙遜が過ぎるのではないか?」
「お祖父様をご存知なのですね」
「サルヴァの命を救ってもらったのだ。忘れるわけがない」
陛下はどこか懐かしむように目を細めた。
「あの男は1の情報で2も3も分かる人間だった。惜しい人材を失ったよ」
「そうですね。祖父は最高の名医でした」
「そう思うなら君が引き継げばいい。ブラット・メディ氏の遺志を」
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