最終話 夢を継ぐ者
薬師協会と共同研究していた、白銀病の治療薬が治験段階を終えた。
医師会と薬師協会に認可され、白銀病への抗生物質の効果が証明された。
エミリアが発表した論文は、世界中から評価された。
それにより、所属しているマルディン王国の医療水準は大幅に上がった。
「本当に、エミリアには驚かされてばかりだよ」
陛下が笑みをこぼしながら言った。
「私はただ命を救いたい。それだけです」
「それでも、君が残して来た功績は大きい。何か、望みはないか?」
「見返りを求めていたわけでは無いので」
見返りを期待した瞬間、それは正義ではなくなる。
「そうも言ってられないのだよ。何かしなくては、王家としての名が折れる」
「そうですねぇ……」
正当な医療報酬はもらっているのだ。
それでも十分なのだが、陛下は納得しないだろう。
「では、この王都に大学病院を開く許可を頂けないでしょうか?」
医療を専門的に学べる機関というのは少ない。
一般的には、優秀な医者の見習いから始めて勉強してから医師国家試験を受ける。
しかし、それではたださえ人手不足な医療界はますます人員不足になってしまう。
「本当にそれでいいのか?」
「はい、医療は未来のための学問です。今の子供達のそのまた子供達、そうやって医療を繋ぐのも立派な仕事ですから」
ブラットは言っていた。
いつか、身分や種族に関わらず万人のための医療を実現したいと。
未来の医師育成はその希望になる。
「分かった。この王都に大学病院を設置すると約束しよう」
「ありがとうございます。そして、私は筆頭宮廷医師を引退させて頂きたく」
「何!? 何か不満でもあるのか?」
陛下は驚きの表情を浮かべる」
「その代わり、大学病院の首席教授にして頂きたいのです」
自分でもこれ以上、仕事は増やせない。
筆頭宮廷医師の仕事と、大学病院の教授は兼任できないだろう。
「なんだ、そういうことか。もちろん構わん」
「ありがとうございます」
「では、次の筆頭医師を決めねばな」
「エリカ先生がいいと思いますよ。彼女は、どんな状況でも人の命を救う覚悟がある」
こうなることを予測して、エミリアは後任を育てていた。
「そういうことなら、問題ないな。早速、大学病院を設立する準備を進めようじゃないか」
♢
半年後。
マルディン王国総合大病院が設立された。
国王の勅命だったこともあり、想像以上のスピード感で出来上がった。
その初代首席教授にエミリアが就任した。
大学で使う教科書も、エミリア自身が執筆したのだ。
首席教授になった今でも、エミリアは患者と向き合い続けている。
「治すよ。あなたの未来」
伝説に語り継がれる医師の誕生だった。
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