第27話 医師の創る明日②
副団長に先導してもらい、サルヴァ殿下の元へ急ぐ。
戦闘はほどんど終わっており、魔物の亡骸が転がっている。
「殿下! しっかり! 今、エミリア様が来ますからね」
騎士たちが声をかけ続けている。
「お待たせしました!」
エミリアが倒れているサルヴァの元へ駆け寄る。
「殿下、聞こえます?」
サルヴァの体に触れると、体温が低下しているのを感じる。
呼吸も薄くなってきている。
「これは、マナ欠乏症……」
体内の魔力が底を尽きると、体温が著しくて低下する。
このままだと命の危険がある。
「どうして、殿下はマナ欠乏症に?」
「レッドワイバーンが現れて、俺たちを庇って切り札の魔法を使ったんです」
「なるほど」
誰かを助ける為に行った行動の代償がこれか。
「すぐに、教会で治療しないと……!」
騎士たちから声が上がる。
マナ欠乏症は教会にいる聖女の祝福という魔法でマナを回復させるのが一般的だ。
「待って! それじゃ間に合いません!」
この状況は一刻を争う。
今から王都に戻っていては殿下の命は保証できない。
「じゃあ、どうするんですか?」
「私の魔力を殿下に分け与えます」
「しかし、エミリア様の魔力と殿下の魔力が適応しなければ……」
他人の魔力が入ってくると、拒否反応を起こすことが稀にあるのだ。
そうなった場合、間違いなく助からない。
「大丈夫。私の魔力は殿下に適応します」
「本当ですか!?」
「はい、大丈夫です」
殿下の手を握った時、嫌な感じが全くしなかった。
それどころか、殿下のマナがすんなり感じることができた。
それは、魔力が適合することを示している。
「治すよ。あなたの未来」
エミリアはサルヴァの手を握る。
そして、ゆっくり魔力を流し込んでいく。
自分の半分ほどの魔力を分け与えた。
殿下の体温は元に戻っていく。
成功したのだ。
サルヴァは目を覚ました。
「おかえりなさい」
「エミリア、さん。そうだ、魔物は!?」
「もう、終わりましたよ」
「そうか、よかった」
サルヴァが目を覚ますと、歓声が上がる。
「俺たちの勝ちだ!!!!」
魔物の暴走は抑え込んだのだ。
これで、国は守れた。
「全く、無茶しますよね」
「私のマナ欠乏症はエミリアさんが治したのか?」
「ええ、今の殿下に流れている魔力は私の魔力です」
「ありがとう。助かった」
そう言って、サルヴァは立ち上がる。
「いえ、医者として当然のことをしただけですから」
「また、助けられてしまったな」
「約束しましたからね。誰も死なせないって」
前回の魔物暴走では多くの犠牲者を出したという。
しかし、今回は犠牲者は出なかった。
「さ、帰りましょう」
「ああ、そうだな」




