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第23話 騎士の流儀と医師の流儀

 薬師協会の動きは、予想以上に早かった。

エミリアの作った解毒剤のレシピを元に、安全性を検証。

そこから、製剤までを請け負ってくれた。


 エミリアの予想通り、薬物中毒の患者は多く出た。

しかし、解毒剤が間に合ったおかげで被害は最小限に食い止められた。


「とりあえずは、良かったと思いたいですね」

「エミリア様、こちらにいらっしゃいましたか。研究室にいらっしゃらなかったので」


 王宮の中庭を散歩していると、後ろから声をかけられる。

散歩はいい。

何も考えずにボーッとしている時にこそ、いいアイディアが浮かぶ。


 これは、医学的にも証明されていることだ。


「どうかされましたか?」


 彼は確か、王宮の騎士団の副団長だったか。


「うちの団長がエミリア様にご相談したいことがあるそうで」

「分かりました。行きましょう」

「ありがとうござます」


 王宮の中にある、騎士団の訓練所の方へ向かう。

この場所になると、貴族よりも騎士服を身にまとった人が増えてくる。


「団長、筆頭宮廷医殿をお連れしました」

「入ってくれ」


 騎士の中でも階級の高いことを示す、紋章が刻まれている団服を身に纏う彼こそが騎士団長なのだろう。


「わざわざ来てもらって申し訳ない」

「いえ、ちょうどやることが終わった所でしたので」

「第一騎士団の団長を任されている、ガルードだ」


 王宮騎士団の中でも、第一騎士団は精鋭揃いと聞いている。

ガルード団長も鍛え上げられた肉体を見るにその強さが窺える。

筋肉はあるが、動きの妨げにならないように考えられて鍛えているようだ。


「エミリアです。よろしくお願いします」

「ああ、よろしく頼む」


 エミリアは団長と握手を交わす。


「それで、私に相談があるとのことでしたが」

「そうなんだ。最近、魔物たちの様子がどうもおかしくてな」

「おかしいとは?」

「簡単に言うと強くなっている。しかも、縄張り以外の所にまで出てくるようになって街を襲ってるという話がある」


 魔物はそれぞれ縄張りがあり、それより外に出てくることはイレギュラーなことだ。


「私は何を?」

「近いうち騎士団を中心に討伐部隊が組まれる。医療チームを率いて同行をお願いしたい」

「なるほど。陛下はなんと?」


 流石に、エミリアの一存で決められることでは無い。


「話は通してあるさ。エミリア様ならたとえ止めてたとして行くだろうって。後、一度決めたらテコでも動かんとも言ってたな」


 あの王、人をなんだと思っているのだろうか。


「それに、今回の討伐には王太子殿下が総指揮官として参加する予定だからな」

「行きます!」

「そう言ってくれると思ったよ」


 サルヴァ殿下は自分を犠牲にしてでも誰かを助けることを考えるだろう。


「詳細はまあ、一週間以内には決まるだろう」

「分かりました。それに合わせて私も医療チームを編成しておきます」


 戦場の救命医療は1人ではどうしようもない。

人手はあった方がいい。


「よろしく頼む」

「任せてください。私の前では誰も死なせません」

「頼りになるな」

「ただ、騎士の皆さんに伝えてほしいことがあります」


 エミリアは懸念していることが一つだけあった。


「なんだい?」

「騎士は誇り高い国王陛下の剣であり盾です。しかし、落としていい命なんて無いのです。美しい死に様にこだわるのではなく、無様でも生きてください。死に様で悔やむより、これからあなた方に助けられるはずだった多くの命を救えない事を悔やんでください」

「肝に銘じる。皆にも伝えておこう」

「お願いします」

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