第20話 命の美しさを知れ
エミリアはエマの手を取って目を閉じる。
魔力を流すとその魔力が打ち消されるのが感じる。
元々、魔力適正が強い子なのだろう。
薬物によって魔力暴走を起こしている。
「大丈夫。助けるからね」
エミリアが優しく魔力を流し込み続ける。
すると、魔力の暴走は治った。
《エミリア・メディが命じる。遡れ》
エマの体を侵していた薬物は完全に消え去った。
呼吸も、脈拍も安定している。
「もう、大丈夫ですよ。彼女の中にあった薬物は無くなりました」
「ありがとう。本当にありがとう」
侯爵が何度も頭を下げる。
「私にできることなら何でもしよう。望みがあるなら言ってくれ」
「医師として治療しただけですから。正当な治療報酬がもらえたら私はそれで。お嬢様が目を覚ましたらあの薬は飲まないように伝えてください」
「もちろんだとも」
副作用なども残らないはずだ。
もう、薬物を体に入れなければ健康状態を保てるだろう。
「陛下にはお願いがあります」
「何だね?」
「薬師協会の会長を紹介してください」
「また、今度は何をするつもりなんだ?」
陛下は怪訝に目を細める。
「薬師協会協力して、今回の薬物への治療薬を作ります」
「できるのか?」
「この薬の成分は分かっているのであれば、難しくは無いかと」
エミリアが全ての中毒者に魔法をかけられる訳ではない。
市場にもこの薬が出回っているのなら今後、中毒患者は増える見込みがある。
「分かった。紹介状を書こう」
「ありがとうございます。では、私は研究室に戻りますので、容態に異変があれば教えてください」
「助かったよ。彼女はこの国の重要人物に違い無いからな」
元宰相の娘というだけで、政治的影響力は計り知れない。
死なせていたら、国家に大きな損害を与えていたことだろう。
「何者なんですか? 彼女は」
「エミリア・メディ医師。ブラット・メディの孫娘で世界最高の医師になる方だと、私は確信している」
「とんでもない方に借りを作ってしまったんですね。私は」
エミリアは自身の研究室に戻る。
そこで、今回の薬物を自分でも成分分析する。
薬は本来、命を救うためにあるものだ。
それを命を奪うものにしてして、金を儲けている人間がいる。
それが許せなかった。
「この成分なら、こっちの薬草の方が効きそうですね」
エミリアは、1人調合を続けた。
より多くの命を助ける為に。
命の軽視するような人間にはなりたくない。
命は美しい。その事実を知ってほしい。
「できた……」
薬を完成させた。
そして、エミリアの元に薬師協会の会長への紹介状が届けられた。
患者の未来を治す。
それが、祖父から受け継いだ信念。
これから大人になる子供たちは、希望の光を目に宿し、前を向いて歩いてほしい。
その希望を守る事も医者の仕事かも知れない。
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