第17話 アリア商会
一週間が経過した。
エミリアは、試作品の感想を聞くためにサルヴァ殿下と侍女たちに集まってもらった。
「その後、使ってみてどうでしたか?」
自分で使ってみた感じは、特に問題ないように思う。
ただ、個人差があるものなので、サンプルは多い方がいい。
「肌に異常が出る所か、いつもより肌の調子がいいんです」
「私もです」
「私も、肌に潤いがいつもよりある気がします」
どうやら、問題無いらしい。
「あの、もしよかったら……」
「どうしました?」
「これからもこの白粉使いたいので、買わせて頂けないでしょうか?」
「もちろんですよ」
エミリアとしても、これからは販売を視野に入れている。
「殿下、この化粧品のレシピをお譲りしますので、製品化して販売して頂けませんか?」
「それは、ダメだ」
「え!?」
これは、予想外の言葉が返ってきた。
「民の幸せもいいが、もっと自分の幸せも考えろ。王都で一番大きな商会を紹介するから、商売として売り込むといい。商会長は見る目は確かだから気に入ってくれるだろう」
「ありがとうございます。私、殿下に会えてよかったです」
その言葉にサルヴァは目を逸らす。
「三日後の午後空けておけ」
それだけ言い残して、そそくさと部屋を出て行く。
人間、関わる人間は選べても出会う人間は選べないものだ。
サルヴァとの出会いは、エミリアにとって間違いなくいい出会いだった。
「あらあら、殿下はエミリア様のことになるとダメダメですね」
「余計なこと言うな!」
殿下と侍女たちは部屋を後にした。
言われた通り、三日後の午後。
王都で一番大きな商会と言われているアリア商会が、王宮にやって来た。
「お初にお目にかかります、エミリア様。アリア商会会長のジャックと申します」
「どうぞ、楽にしてください。エミリア・メディです」
「では、お言葉に甘えて」
ジャックはソファーに座り直し、エミリアの顔をじっと見つめる。
「どうされました?」
「確かに、面影があるかもしれませんね。ブラット様に」
「祖父のことをご存知なんですね」
「ええ、ブラット様には父の代から大変お世話になっておりまして、そのお孫様と商談ができるとはこんなに嬉しいことはございません」
商人らしい、底が知れない笑みを浮かべている。
「ありがとうございます。早速、本題に入っても?」
「もちろんです。筆頭宮廷医師のあなたがどんな商品を持って来てくれたか、楽しみです」
「では、まずはこちらをご覧ください」
エミリアはサンプルで作った化粧品を取り出して、テーブルに置いた。