133.葛藤、共闘、人命救助 ③
春斗は怪人たちの真ん中に飛び込み、ビームライフルを連射すると、赤い光を一閃、横に薙ぎ払い、グラムソードで一気に七体の怪人を斬り倒した。
その背後から襲いかかる怪人の攻撃を盾で受け止め、春斗は言い放つ。
「無意識に動いてるだけのマネキンに負けるわけがないだろ!」
反撃しようとしたその時、トオルが『ファイアフィスト』で春斗を狙っていた怪人を殴り飛ばした。
「ふん、レベルが上がったか?」
「それより、お前からもらった知恵の輪、解けた」
「ほぉ?あの難易度をこの三日間を解いたのか?」
「いえ、君が送った当日の夜に解けた」
「貪食者を追いながらプレッシャーを掛ける中、それでも解けたか、お前も脳みそが切れる奴だな」
春斗はさらにニードルランサーでトオルの背後に迫る怪人を撃ち抜き、高を括る態度で言い返した。
タマ坊も怪人たちにビームマシンガンを掃射し、その動きを止めて牽制する。
「どうしてそんな才能があるのに、人を騙してまで使うんだ?」
「俺より賢い奴の慌てる顔を見るのが最高だからな」
「それなら、どうして解けた人にしかポイントを請求しないんだ?本気で儲けたいなら、商品を取るときに払わせるほうが確実だろ」
「お前に万年5位の気持ちがわかるか?どんなに頑張っても、上位のやつらには勝てない。輝いているやつらと比べられて、どうでもいい存在になりかけた。これは、そんな奴らに対するリベンジだ」
「なるほど…だから頭のいい奴を狙うってわけか」
トオルにはその気持ちは考えることなかったが、高校時代、自分はクラス上位10にすら入ったことがなく、苦手文科科目も多かったため。勉強しても500人弱の生徒中で全学年100位前後がやっとだった。クラスの2位常連だった依織には上位生徒と学業面での競争意識があったが、トオルには成績のために強者たち競い合うという悩みがなかった。
依織は剣で怪人を鋭く斬り払い、盾で怪人をトオルと春斗の方へ押し飛ばす。
「君たち!楽しげに話している場合じゃないでしょ!」
「ごめん」
「ああ、分かった分かった、お前は本当に人を示唆する上手女だな」
依織は盾で怪人を叩き飛ばせた。
「そんな風に思われたか?気の毒だわ」
三人の共闘で、わずか5分後には怪人の軍勢は大幅に減少。社長室ではクロディスがメアリを足止めしており、怪人の増援が途絶えた。
その時、五発の電気光弾が次々と怪人を打ち倒した。
「ここはロードカナル学院生徒会所属、アニス・ミズキだ。私率いるサンジェストール騎士団が砲撃で制圧する。そこにいる三人、戦いをやめて身を伏せなさい!」
凛とした声に、依織たち三人は怪人を打ち倒しつつ、身を低くした。
よく見ると、バトルスーツと武装アーマーを着込んだ12人の団員が二重鳥陣を組み、銃砲武装を構えていつでも発射できる態勢を裾える。その後方には、175cmを超える長身の女性が立っていた。小顔に水色のスーパーロングの髪をたなびかせ、四つの角と羽のようなパーツが特徴的で、銀、白、黒の光がきらめくバトルスーツにアーマーを纏い、右腕には長大なバスター砲を構えている。彼女の発する凄まじい源気は電気のように変質し、武装に充填されていく。
「例の貪食者が作った疑似体を狙い撃て!」
「了解、アニス副会長!」
騎士団の12人が応じ、一斉に射撃を開始した。弾幕が怪人たちに降り注ぎ、怪人は爆発四散していく。
一斉射撃で放たれた弾幕が、正確に植物怪人を掃討していく。光弾が直撃するたび、怪人は爆散し、消え去る。しかし、まだ倒されていない怪人たちが立ちはだかっていた。
「現地で戦術支援に待機している者は4人、他は全員、接近戦に備えたまえ!残っている擬似体を一体残らず撃ち倒すんだ!」
「了解!」
八人の男女がそれぞれソード、レイピア、槍、斧を構え、一斉に敵へ跳びかかる。後方で支援射撃する者が敵の動きを牽制し、攻撃側は容易に敵を撃ち倒していく。
「これが騎士の戦い方か?」
圧倒的な攻勢で怪人たちを制圧していく様子に目を丸くするトオル。隣でそれを見ていた依織も、感心したように声を漏らす。
「すごい……これだけの人数が連携して戦うなんて、しかもこんなに円滑に……」
四つ学院の一つ、生徒会がこの場に攻め込んできたことから、交渉が失敗したと悟った春斗は、床に伏せて頭を抱え、焦燥の色を浮かべる。
怪人たちは攻撃と防御の判断もつかず、動きがぎこちなくなるばかりだった。その隙に、サンジェストール騎士団が一方的に撃滅していく。