132.葛藤、共闘、人命救助 ②
振り向くと、十数体の植物軍団が彼らに向かって押し寄せてきていた。
「またこんなにも擬似体を作ったのか……!」
依織は新たな盾を構え、戦闘態勢に入った。
「トオルくん、私が敵を食い止めるから、その間に人質を解放して」
「分かった。でも、無理はするなよ!」
依織は敵に向かって駆け出し、トオルも奮起して解放作業を急いだ。
メアリの弱点を狙って攻撃することで、怪人たちはさらに凶暴で素早く動き出した。依織は奮戦を続けるが、いくら倒しても次々と現れる敵に、渋い顔で冷や汗をかきながら言った。
「きつい……この怪人たちの動きはさっきまでとは全然違う……」
「弱点を突かれたから、全力で抗おうとしているのか?やっぱり、僕も戦いに加勢するべきかな?」
「うん、お願い」
その瞬間、光の束が敵を貫いた。
次々と怪人たちが赤い光に打たれ、爆散していく。
「これは一体……?」
「君は!石井春斗!?」
トオルと依織が視線を向けると、そこにはベリーショートの髪をブラウンとゴールドに染め、黒銀の太いノンホールピアスを付けた男が立っていた。彼は右腕に90センチほどの黒銀の盾を装備しており、その裏にはビームライフルと、リボルバー式発射装置が組み込まれた六本のニードルランサーが内蔵されている。
「トオル君、この人って、あなたと賭け勝負をした人よね?いつも玄関でアクセサリーを売っているあの詐欺商売人」
「ああ、そうだ」
春斗は口角をつり上げ、嘲るように言う。
「お前がここまで追いついてくるとはな。思ったよりも役に立つじゃないか」
「あなたはどうし貪食者のことを協力するの?」
「ふふ、これが俺のやり方だ」
そう言いながら、春斗はビームライフルでさらに一体の怪人を撃ち倒した。
「一体何が目的だ?」
「奴らの仲間に入り込んで、証拠を掴むためだ。そう、いわゆる潜入捜査ってやつさ。ここで、俺に協力させてくれないか?」
しかし、春斗の言葉には微妙な不自然さがあり、脈音パータンも嘘を吐いていることが分かる。トオルは不信感を強めて眉をひそめた。
「そんなの必要ない。君は何か企んでいるが知らないけれど、気安くに仲間を裏切る奴の助けなんかいらない!」
「そうか、せっかく同胞を助けようとしているのに、拒否されるとはな。撤収するか?撤収〜撤収〜」
春斗はそう言って背を向け、よそよそしい口調で笑った。
依織は怪人を斬り倒しながら、盾を押し飛ばして春斗に呼びかける。
「待ちなさい!協力するかしないか、そんな簡単に気を変わるなんて大人げないね。そんないい加減な態度だから、誰からも期待されないでしょうね?」
依織の挑発にカッとなった春人は振り返り、ニードルランサーを発射。数体の怪人に刺さり、動きを止めたところで、ビームライフルで仕留めた。
「これでどうだ!」
「よく狙っているじゃないか、もっと頼れるかな?石井さん」
春斗は飛び降り、盾の裏に取り付けられた黒銀の柄を外してグラムソードに変え、戦闘に突入した。
「依織さん……?」
「人命救助が最優先よ。今は石井さんの力が必要だわ」
「分かった……タマ坊、一時的に彼と共闘しろ」
依織の説得にトオルは動揺しながらも指示を出した。
春斗は不敵な笑みを浮かべ、ビームライフルで次々と怪人を撃破しつつ、依織に向かって言った。
「ふん、お前は、見た目以上におっかない女だな」
「どういう意味かしら?」
薄い笑みを溢す依織はそう答え、盾で攻撃を防ぎながらさらに怪人を斬り倒していく。