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121.決戦の時 ③

「お嬢さんの強い勢いに頭を下げるが、こいつにそう簡単にダメージを与えられない!」


失血で息が荒い穣治は、鞭を握りながら防御の体勢を取った。


「人を止めるのに、わざわざ血生臭い方法を取る必要はないでしょう?一年生なんだから、傷を負ったらおとなしく見てなさい」


 ケティアは空中で8の字を描くように飛び回り、その優雅で安定した飛行を見せながら、冷ややかに言い放った。


「ハハハ、素晴らしい獲物が入ってきたじゃないか。どこから現れたのかは知らんが、俺の狩猟テリドリーに入ってきた以上、逃がしはしないぞ!」


 ユリアンは新たな触手を生み出し、無数の細かい繊毛が咲き誇るように現れる。紅と青の二色に輝くその触手は、十数本が空中に向かって伸び、ケティアに襲いかかった。


ケティアは槍を素早く回し、迫りくる触手を鋭く斬り落とした。疾風のごとく動く蜂蜜色の刃が、触手を瞬く間に細切れにしていく。


「同じ生物オルガニズム系の操士ルーラーの私を舐めないで。こちらにも手はあるわよ。さあ、子供たち、出番よ!」


 ケティアが槍を大きく振ると、直径50センチほどの源気グラムグラカの塊が形成され、そこから6匹の特別なスズメバチが現れた。6本の足には2枚の鋭い刃が取り付けられた特別な個体で、それぞれが自在に触手を相手に戦っていた。


「そんな数で私を倒せると思うのか?」とユリアンが嘲笑する。


「私のブレイドホーネットは分身よ。雑に作られた雑魚軍団とは違うわ」


 ケティアは頭に付けてある触覚が輝いている、ブレイドホーネットたちは12枚の刃を持ち、ケティアの闘いの技術と知性を反映して、攻撃と防御を自動で行う。小さな体でも俊敏に動き、あらゆる方向から迫りくる触手を一瞬で加速して斬り裂いていった。その中の一匹は穣治の前に立ち、彼を守るように宙を舞っていた。


「どうやら私が作った子たちの方が上手みたいね。あなたの操る触手、まるで単細胞生物のような単純な動きだわ」


ユリアンは何百本もの触手を生み出し、勇敢に戦うブレイドホーネットたちを圧倒しようとする、次々に触手が制圧されていく。


ケティアは穣治じょうじの上空に浮かび、背に取り付けた尾部型のバックパックを外して地面に投下した。


「それは何だ?」と穣治が尋ねた。


「あれはレスキューユニットよ。小型だけど、手術室並みの機能が詰まっているわ」


「どう使うんだ?」


「センサーパッドに触れれば作動するわ」


 穣治がバックパックのセンサー装置を見つけ、手で触れると、レスキューユニットが音声案内を開始した。


<救命対象を確認。すぐに容体をチェックします。戦闘行動を停止し、体を横たえ、じっとしていてください>


薄いマットが自動で敷かれ、穣治の容態をスキャンしながら処置内容を告げる。


<穿刺傷を三箇所確認。失血が続いています。輸血と源気補充を開始します。直ちに傷の縫合手術を行いますので、しばらくお休みください>


 穣治の血液型とエネルギー属性を確認したレスキューユニットは、細いチューブを出し、穣治の腕を消毒してから針を挿入し、輸血を開始した。同時に、6本の機械腕が穣治の傷を縫合し始めた。


 2匹のブレイドホーネットが穣治を守るように動き、襲いかかる触手を撃退していた。


 ケティアはユリアンの力を試すため、自ら攻撃を仕掛けることはせず、3匹のブレイドホーネットに命じてユリアンを三方向から攻撃させた。


 ユリアンは手から3本の紅い光を放ち、蛇のように太い触手が迫りくるホーネットを丸呑みにしようとする。


「調子に乗るな!この触手に飲み込まれたものは、全て俺の糧となる!」


「何度も飲み込むと、消化不良になるかもしれないわよ」


 ケティアが微笑むと、飲み込まれたホーネットが高熱を発し、自爆した。触手はその中心で爆発し、粉々に散った。


「うっ……!」とユリアンは即座に腕に繋がった触手を切り離した。


「くそ、こんな手があるとは……!」


怒りに震えたユリアンは、さらに数百本の触手をケティアに向けて放った。


 ケティアは槍を素早く振り、X字に触手を斬り払い、さらに大きく槍を振ると、肩や太腿、背中の穴構造から蜂蜜色のエネルギーを放出した。


「バーニングホーネットミストフラッシュ!」


触手が霧に触れると、瞬く間に燃え上がり、ケティアに届く前に炭化して消えた。


「な、何が起こっている……?触手が燃えているだと?」


「ちゃんと見ている?この霧の中では、ホーネットをどこにでも作り出せるのよ」


 霧の中に2センチほどの小さな火赤色のホーネットたちが無数に現れ、触手に付着すると自然発火し、触手を燃やしていった。


「さて、この戦いを終わらせましょうか」

ケティアは槍から光の束を三発放ち、ユリアンに突進した。


光の束の攻撃を避けたユリアンは狂う面で大笑う。


「ハッハッ!掛かったぞ!!」


 地下から伸びた触手がケティアを絡め取った。六枚の翅が秒に10万回も羽ばたいていたが、触手の力には抗えない。


「なに!?」

さらに複数の触手が打ち出され、ケティアの手足をがっちりと拘束する。


「くっ…こんな罠が仕掛けたなんて……」


「救援部隊を始末するために設置したチインアナイソキンチャクが、ここで役に立つとはな!」


飢えた触手たちはケティアの体から強引に源気を吸い取ろうとする。


「ぐっ…! なんて力だ…!」


ケティアは必死に触手に抗おうとするが、次第に力が奪われていく。


「力が…消えていく…! こんな…! ぐああっ!」


急激に源気を吸い取られたケティアの体は痙攣し、自由が奪われた。


「ハハハハ! それこそ獲物が見せるべき反応だ!」


三体のブレイドホーネットがケティアを助けようと駆け寄る。しかし、地面からさらにチインアナイソキンチャクが生え出し、ホーネットたちをも捕らえてしまった。


「お前が作った蜂たちも、お前と一緒に愚かな獲物に過ぎん! さあ、大人しく俺の糧となれ!」


「フン…流石にこのままではまずいか……」


ケティアは弱々しい声で呟くが、その目にはまだ諦めの色が見えない。


「お前の口の悪さも、弱くなった女には何の意味もない。俺に屈辱を味わわせたその罪、たっぷりと償わせてやる。これでお仕置きをしてやろう!」


ユリアンは手から新たな触手――ヘビイソキンチャク――を打ち出し、太く蛇のような触手がケティアに向かって大きく口を開け、襲いかかる。


その瞬間、空を裂くようにリッパーが真っ二つに斬り裂いた。


「な、何だと?」


「俺を忘れたのか? 死神とも百回は喧嘩して勝った男が、復活したんだぜ!」


レスキューユニットの手術を受けた穣治が立ち上がり、笑みを浮かべている。


「貴様…邪魔をするな!」

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