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118.ピンチ、深紅の応援突破

二人は地に足をつけて体勢を整え、依織いおりはシルバーブルーの光を纏いながら右手に剣、左手に盾を作り出し、戦闘態勢を取った。


「一緒に突破しましょう、トオル君!」


「ああ」


「ふふ、君たちの持っている源気グラムグラカは私の足元にも及ばない。抗ってみても長期戦には耐えられず、絶望の中で滅びるだろうね」


女性の植物怪人が、見た目に似合わない少女のような声で言った。


「そんなこと、簡単に言わせないわ!」


依織は鋭く剣を振り払い、攻めてくる植物怪人に盾を叩きつけて倒し、器用に六体を撃破した。


「みんな、各自で敵を倒して!ここから脱出するための突破口を作ろう!」


トオルの指示を受け、タマ坊はステーク・ウェッブを使い、攻めてくる怪人を撃ち飛ばすと、さらに粘着弾で複数の怪人の動きを封じた。追加武装のエネルギーボールと4連ビームマシンガンの一斉射撃で怪人たちを撃破していく。


 コダマはウィングカッターを放った後、スカーレットバンとビームマシンガンで交互に攻撃を続ける。


トオルは自らミラーフォースシールドで防御を固めつつ、攻撃役であるコダマとタマ坊に源気を分け与え、怪人10体を倒した。


「こんな脆い植物人形、何体こようと倒してみせるわ!」


依織は強い蹴りと盾で植物怪人の体勢を崩し、確実に剣で斬り倒していく。


しかし、さらに多くの怪人が出口を塞ぐように現れた。


「また新手が……この数は20体以上……これは突破するのは難しいかも……」

トオルが弱音を吐く。


なかなか突破できず、二人が必死に抗っていると、赤い刃が一定の軌道を描きながら飛んできて、目の前に立ち塞がる怪人たちを刈り取るように真っ二つに斬り倒していった。


「一気に多数の敵を……一体、誰が?」


二人はタワーの上に立つ人影に目を向けた。


「この源気の気配……もしかして、セレスティアさん!?」


光に照らされ現れた女性は、薄青い肌に長いダークブラウンの髪をなびかせていた。背中にはコウモリの翼が広がり、太腿までのロングブーツを履いている。


「少しピンチのようだったね、クールボーイ」


彼女の手に飛び戻ってきた赤い刃は、彼女の身長よりも大きい血塗れの大鎌で、鎌の底部には牙のような形をした鎖状のパーツが三本垂れていた。


セレスティアは深紅の源気を纏い、ロケットのように突き出した谷間にビキニアーマーを身にまといながら、高所から軽やかに飛び降りた。彼女は大鎌を振りかざし、瞬く間に七匹の怪人を斬り飛ばし、斬られた怪人たちは光となって消えた。


「トオル君、この方は誰?」


「彼女は僕のクラスメイト、セレスティアさんだ。どうしてここに来たんですか?」


「ちょっと用があってね。物を探している途中で君たちに気づいたから、様子を見に来たのさ」


依織は青い肌とコウモリのような翼を持つ彼女を見て、一瞬、悪魔のような姿に恐れを抱いたが、トオルが普通に話しているのを見て冷静さを取り戻し、前に出て手を差し出した。


「トオル君の友人です。内穂依織と言います」


依織よりも頭一つ高いセレスティアは意味深な笑みを浮かべ、握手を交わす。


「セレスティア・メイア・サキュバスラよ。君はクールボーイの仲間かしら?可愛いらしいお嬢ちゃんだこと。金属系を作れる騎士だなんて、期待される子みたいね。これからが楽しみだわ」


「セレスティアさん、源気の使い方が上手なんですね?」


「どうしてそう思うかしら?」


「さっきまで大鎌を投げていたのに、全く気配を感じませんでした」


依織の真剣な表情を見て、セレスティアはさらに笑みを深めた。


「ふふ、それは私の一族にとって些細なスキルよ。私たちは赤ん坊の頃から自然に身に付ける本能みたいなものね。人間も修業すれば覚えられるスキルよ」


「それだけじゃない、あなたは歴戦の戦士なんですね?」


セレスティアは自らの長い髪をかき上げ、平然と笑みを浮かべた。


「褒め言葉は結構よ。この姿のせいで誤解され、無意味な戦いに巻き込まれることが多い。でも、戦いの経験が豊富なのは、タヌモンス人のトラブルメーカーたちのおかげね」


セレスティアは話を振り回しながら、トオルに目を向けた。


「ところで、君が作ったあの子たち、元気に戦っているじゃない?紋章術を使える法具まで作れるなんて、君の開発中の機元使い魔にはますます期待しているわよ」


セレスティアは前に身を乗り出し、トオルと身長差があるため、彼女の胸元がはっきりと見える角度だった。トオルは両手を前に出して苦笑いしながら言った。


「まだ試作品の段階なんです。もう少し時間をいただけると助かります」


トオルの無愛想ながら真剣な目つきを見て、セレスティアは軽く目を閉じ、微笑んだ。


「目的は違うけれど、途中までは少し手を貸してあげるわ。あの女の居場所まで連れていくのは十分かしら?」


依織が口を開いた。


「それは心強いです」


「少しペースを抑えるけど、しっかりついてきて頂戴」


その瞬間、新たな植物怪人が前方に立ちはだかった。


「また新手か」


「突破するわよ」


セレスティアは軽やかにステップを踏み、大きな翼を一振りして一気に加速。持っていた大鎌を振りかざし、左から右へと一閃。次の瞬間、彼女は再び翼を振り、空中で加速して右から左へと突進、立ちふさがる怪人たちを次々と斬り捨てた。


セレスティアの強行突破のおかげで、トオルと依織は倉庫から脱出できた。廊下に出た2人の目に飛び込んできたのは、すでにあちこちに斬り倒された植物怪人の屍。倒れた怪人は光となって消え去っていく。依織は感嘆の声を上げた。


「凄い……私たちでは到底手が出せないわ」


「追いかけよう」


「待って、ムラサキちゃんを出していこう」


依織はポケットからムラサキを取り出し、優しく声をかけた。


「ムラサキちゃん、起きて。私たちを応援して」


ムラサキは依織の声と源気に反応し、目を覚まして宙に浮かび上がった。トオルは整った依織を見て、前に進むよう促す。


「行こう」


少し先には、セレスティアの姿がわずかに見えている。依織は全力で走り出し、トオルも後を追った。コダマとタマ坊もすぐに追いついてきた。


「2人とも遅いね。のんびりしてると置いていくわよ」


「これでペースダウンしてるの……?どんだけ早いのよ」


依織は汗で顔が光り、全力で走り続ける。ようやく追いついたトオルは足を止め、息を切らせた。


「トオルくん、大丈夫?」


「ぼく……走るのが苦手で……」


「包囲戦を突破するのに、コダマたちも源気をかなり使ったからね」


「仕方ない……もう一本飲むか」


トオルはポーションをもう一本取り出し、飲み干した。継続戦には、アイテムで体力を補うしか方法がない。手の甲で口元に溜まった液体を拭い、荒い息を整えて続けた。


「さあ、行こう」


十字路に差しかかると、すでにセレスティアの姿は見えなくなっていた。トオルは迷わず、倒れた怪人が多い右の道を選んだ。


「右に行こう」


「今度は左か?」


2人は植物怪人が散らばる道を進み、10分ほどして曲線を描く廊下にたどり着くと、セレスティアが待っていた。


「遅いわね。他の新手に襲われたかしら?」


「すみません……ぼく、体力的には弱点なんです」


セレスティアは小動物を見るような微笑みを浮かべた。


「そうなの?でも、君たちが追っているあの女はこの階段を上った先の部屋にいるわ」

依織が尋ねた。


「セレスティアさん、私たちと彼女が正面から戦ったら勝ち目がないって言いましたよね?」


「ええ、確かにそう言ったわ」


「もしかして、私たちでも勝てる方法を知っているんじゃないですか?」


「貪食者の最大の弱点は、他者の源気を奪い続けないと維持できないことよ。彼女の源気を供給する源を断ち切れば、急速に衰弱する。でも君たちはまだ初心者レベル、衰弱した貪食者との戦いなら五分五分ってところね」


「それが唯一の倒す方法なんですね……」


「ヒントをありがとう、セレスティアさん。ここでお別れですか?」


セレスティアは甘く、毒蜜のような笑みを浮かべた。


「ええ、幸運を祈るわ」


「依織さん、僕たちも行こう」


トオルと依織は階段を駆け上がった。


「ふふ、賭けに勝つのはどっちかしらね、クールボーイ」


セレスティアはそう呟き、闇の中に消えていった。

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