111.敵襲、鹵獲されたヒロイン ③
そう言った瞬間、体格の大きな人型の怪人がベランダに跳び入ってきた。先ほどの怪人たちと同じ服装をしており、身長は3メートルほどもある巨躯。緑色の帽子を被り、胸板は分厚く、手足は蔦で纏められ、まるで筋肉のように膨らんでいた。
その怪人を見て、穣治は苦々しく笑いながら叫んだ。
「オイオイ、今度は親玉が出てきたのか?」
その巨体に、美鈴は怯えながら問いかけた。
「こんな大きな擬似体、私たちに倒せますか?」
さらに戦闘態勢を取る大輝が陽気に答えた。
「こいつは体がデカいだけだ。急所を狙えば倒せるさ!」
トオルは巨人の植物怪人に向かってファイアボルトを撃った。クリーフもライフルで強力な射撃を放ち、帽子のようなものを撃ち落とした。しかし、怪人は傷を負ってもなお動き続けていた。
怪人は依織に目を向け、彼女に狙いを定めて大きな拳を振り下ろしてきた。だが、依織はその攻撃を避け、ソードで巨人の腕を斬り落とした。
依織の目が鋭くきり、加速してさらに攻撃を加える。
(グシャ!グシャ!――)
巨人の両腕が切り落とされ、依織はその場に立っていた。
「依織お姉さん、凄い!そんな大きな敵でも怯えずに戦えるなんて!」
「でも、何か変だ……あの怪人は僕たちの存在を無視して、ずっと依織さんだけを狙っている」
「どういうこと?」
「この怪人たちは最初から依織さんを狙っているんだ!」
その違和感に気づいた穣治も叫んだ。
「これはマズい!お嬢ちゃんがヤツに近寄りすぎてる!」
トオルは急いで指示を出す。
「コダマ、スカーレットバンを撃て!」
コダマは鋭い鳴き声を上げ、宙に飛び上がり、赤いエネルギー弾を打ち出した。怪人は一発目をかわしたが、二発目は胸に直撃した。怪人はコダマの攻撃を耐えられた。
「こいつ、なんてタフなんだ!?」
「それなら、私が止めを刺してみるわ!」
依織はソードを構えて再び攻撃しようとしたその時、別の場所から襲ってきた蔦が依織の脚を絡め取った。
「足が動けない!?これは何!?」
よく見ると、先ほど依織が切り落とした腕から新たな蔦が生えていた。
依織はすぐに蔦を切り払おうとしたが、その間に怪人の胸元が花のように開き、蔦が依織の手足を巻き付けて引き倒した。
「嫌〜!!こんなのは聞いてない!!!」
依織はソードを失い、全力で抗おうとするが、怪人はさらに多くの蔦を伸ばし、彼女を宙に吊り上げた。
「ぎゃああああ!離せて!!」
「ハッハハハ!この小娘をいただくぞ!」
依織は絶叫した。
「いやあああああ!みんな助けて!!!」
怪人は狂喜するような表情を浮かべ、まるで勝利を確信したかのようにトオルたちを挑発するようだった。トオルは源気を使いすぎて頭が痛くなり、手を額に押し当てた。
美鈴は、宙に吊り上げられ、蔦に弄ばれる光景に目を丸くした。
「依織姉さんに、なんて酷いことを!」
穣治は前に跳び進み、鞭で怪人の足を何度も打ったが、ダメージが全く効いてなさそうだ。
「くそ、鞭の攻撃が効いてない」
依織を捕らえている蔦が、彼女の源気を吸い取っている。依織が放つ光が怪人の方へと流れ込んでいくのが見えた。怪人は依織の源気を奪っていく、彼女の源気で傷を治って行く。
穣治たちも依織を救う手立てが見つからなかった。
その時、クリーフがライフルで怪人を撃った。
「ぎゃあ!!!」
しかし、穣治が怒りながら叫んだ。
「銃で撃つな!お前、お嬢ちゃんに当たったらどうするつもりだ!?」
クリーフは言い返せなく肩を聳えて銃をおろした。
宙に吊るされた依織は、体から源気を吸い取られ、抵抗する力を失いつつあった。辛い表情を浮いて、気弱く声で助けを求める。
「トオルくん……後のバックアップをお願い……」
怪人は依織を自らの胸元の花の中に引き込んだ。胸が扉のように閉じられ、依織の姿が完全に消えた。怪人は新しい腕を生やし、背中からレタスのような翼を広げると、足に力を込めて飛び立ち、夜空へと消えていった。
「依織さーーーん!!!!!」
トオルはベランダに飛び出し、遠ざかっていく怪人に向かって叫んだ。