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110.敵襲、鹵獲されたヒロイン ②

テーブルの下に隠れていたトオルと依織は、お互いの顔を見合わせた。


「この人たち、一体何者なの?私たちを襲うつもり?」


トオルはナイフの反射で見た怪人たちの様子を観察し、冷静に言った。


「生き物らしい脈動が感じられない。ゲネルさんが言った通り、擬似体だね。それに、この人たちからは源気が感じられない。植物の蔦を武器にするということは、恐らく私たちが追っている貪食者の一人、植物の擬似体を操る者の仕業かもしれない」


「でも、どうして彼らは私たちの正体を知っているの?トオルくんが犯行証拠をアイラメディス生徒会に渡すのは秘密だったはずだよ」


「もしかしたら、白井春斗しろいはるとが僕の追跡に気付いたのかもしれない」


「とにかく、まずはこの植物怪人たちを撃退しないと!」


「そうだね、金田カナダさんたちに協力しよう!」


「どうするつもり?」


「僕は少し強めの紋章で怪人を撃ち飛ばす。でも、金田さんが巻き込まれる可能性がある」


「わかった、タイミングを合わせるわ」


「頼むよ」


トオルは右手に着けたグローブを握りしめ、源気を拳に注ぎ込む。手の甲にあるアーティファクトが光を放った。


依織いおりはイリジウムソードを翳し、先に飛び出して2体の植物怪人を鋭く斬り払った。


首を失った怪人は左腕を斬り落とされ、もう1体の怪人も腹部を半分斬られた。さらにクリーフはソードライフルで首を失った怪人の反対側を攻撃し、穣治もまた別の怪人の腹部を強く蹴りつけた。


攻撃を受けた怪人たちは再び揺れながらも、立ち上がろうとする。


「金田さん、加勢に来ます!」


「サンキュー!」


「一旦、避難しましょう。トオルが紋章を撃ちます!」


穣治とクリーフはトオルに目を向けると、既にトオルは立ち上がり、一歩前に出て右手を胸元に掲げていた。


「おっと!一時的に退避か!」


その動きを察知した穣治は右側へ、クリーフと依織は左側の壁へと身を潜めた。


「術式ロード、エールバズーカ!」


 トオルの声に反応して、グローブのドッターが光り輝く。トオルは手を伸ばし、指先に直径100センチほどの円形の紋章が描かれていく。緑色の術式が周囲の空気を集め、圧縮された空気弾が撃ち出された。


 その一撃を受けた植物怪人たちは木っ端微塵になり、ベランダにいた怪人たちも一掃された。


「ヒュー!スッキリする一撃だな、トオル!」


「ベニハナの火焔が効いているみたいだ。このまま炎の紋章で撃とう!」


「おう、名案だぜ!俺が先手を取る。大輝、協力してくれ!」


「もうやってるぜ!」


大輝だいきは光弾を集め、飛び込んでくる怪人たちを次々と撃ち倒していく。


 穣治は窓を境界線に決め、それを越えて入ってきた怪人たちを鞭で打ち払った。しかし、倒れた怪人たちは再び立ち上がり、さらに新たな怪人が垣の外から飛び込んできた。不審集団の襲撃が続き、戦闘の爆発音が何度も響き、街を歩いていた人々のざわめきが聞こえてきた。




 1分ほど前、乱気流を避けようとしたクリーフと依織は、壁にぶつかったが、クリーフが依織を庇い、彼女は壁の衝撃を免れた。


「あっ、クリーフ先輩、申し訳ないです……」


クリーフは余裕のある笑みを浮かべて答える。


「いえ、レディーを庇うのは光栄なことですよ」


「先輩、言い過ぎですよ」


「いえ、僕は本気で言っているんです。依織さんはタフな女性ですね?」


「それって、どういう意味ですか?」


「僕は器用な女性に惹かれるんです」


クリーフの軽い口説きに気づいた依織は、彼を軽く突き飛ばしながら答えた。


「先輩、今は戦闘中ですよ」


「そうですね、まずはこの連中を片付けないと」


 クリーフは平然とした涼しい笑みを浮かべながら、再びソードライフルを構え、穣治たちの戦いに加勢した。今度はさらに威力を高めたバスター銃で撃ち、人の腕ほどの太さのエネルギー柱が怪人に直撃する。たった一発で怪人を撃ち倒した。


 美鈴は手に反転コンヴェルボールを持ち、自らの源気を注ぎ込んだ。


「私も協力します!」


 わずか3秒で反転ボールが発動し、球体にある二つのスイッチが光る。攻撃と防御がはっきりと示された記号を見て、美鈴は赤いスイッチを押し、反転ボールを窓の外に投げ出した。


やみ真紅しんく炎威えんい 破軍(はぐん)


 反転ボールが宙に紋章を展開し、綺麗な紋様と縦書きの俳句が綴られた。瞬く間に燃え上がった火球が5本の槍となり、怪人を貫いた。


「おお!美鈴みすずお嬢ちゃん、凄いものを出したな!」


初めて紋章術ルンクラスターの効果を目にした美鈴は、不思議そうな表情を浮かべた。


「えっ?この前、私が自然元素をテーマに作った俳句が、どうして反転コンヴェルボールに反映されたんでしょうか?」


「よく分からないが、それが魔導士のスキルだろう」


使い方がわかった美鈴は、さらに戦いに加わるように声を上げた。


「そうですか、それならもう一つ使いますね。まずはベニハナ、煙幕で敵の目を覆って!」


ベニハナは口を開け、スモークを噴き出した。黒煙がベランダにいる怪人たちの動きを鈍らせた。


しかし、大輝がすぐに呼びかけた。


「バカ!これじゃこっちも見えないだろ!」


「そうでしょうか……?」


 美鈴は二個目の反転ボールを投げ出せなかった。


「いや、白河さんが仕掛けた技を意味成せる」


トオルはポケット納屋からコダマを取り出し、指示を与えた。


「コダマ、強光を照らして、ビームマシンガンで敵を狙え!」


 コダマは羽を大きく広げ、強烈な光を放った。煙の中に潜む影に向けてビームマシンガンを撃ち、倒れる音が響いた。


「よし!コダマ、ライトを消して」


コダマはトオルの指示に従い、羽を閉じた。


 さらにトオルは、二度目の紋章を綴り、オレンジ色の光を放つ小さな三枚の紋章を重ねた。


「術式ロード、ファイアナックル!」


 トオルは聴覚を頼りに怪人たちの位置を見極め、燃え盛る拳を3ヶ所に放った。炎の拳は3体の怪人を確実に撃破した。


ファイアナックルによるエネルギーの衝撃で、煙が薄まり、視界が広がる。


「よし、一気に攻めよう!」


 しばらく動きのなかった怪人たち。依織は敵の勢力が弱まったと判断し、ソードを持ってベランダに飛び出した。


戦場は混乱しており、依織の大胆な行動に穣治が大声で叫んだ。


「おい!お嬢ちゃん、出過ぎだぞ!」


「今のうちに敵を一気に抑えないと!」


 依織は素早い身のこなしでソードを振り、次々と8体の怪人を切り倒した。怪人たちは姿を消し、しばらくの間、増援の気配はなかった。


その様子を見て、大輝が声を吐いた。


「これで、やったか?」



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