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102.魔の手

 その夜、工場団地にある、貪食者が集まる廃棄工場から300メートル離れた飛空艇製造工場は、まるで巨大なタコのように地上に広がっていた。


 工場は2つの月と星空の光よりもさらに眩しい光を放ち、生産ラインでは指令回路マンダキューで動く機元ピュラトユニットが稼働し続けている。


社長室は、まるで魔の巣のように、あちこちに植物の蔦や茎が生い茂っていた。


 社長室の机は既に少女の玉座となり、彼女が座る場所から植物の蔦が裾のように机から周囲の床、さらには壁にまで広がっていた。


 脚を組んだ少女は、戻ってきた4体の蔦の怪人たちから、歓楽街の男たちから吸い取った源気を受け取っていた。


 源気で満たされて機嫌が良い少女は、頭に蔦で編んだ王冠をかぶり、身に溜まる複数の男の気配を堪能しながら、妖艶な笑みを浮かべている。


そこへ、春斗ハルトが部屋の外から入ってきた。


「あら、こんな時間に君が私に何の用かしら?」


蔦はこの部屋だけでなく、工場全体にも広がっていた。


「お前、やり過ぎだ」


「この工場の支配人はもう私のとりこよ。私が手に入れたこの場所をどう使おうと、私の勝手でしょう?」


「ユニットの効果範囲はたった3メートルだ。お前がこの工場全体に蔦を広げたら、気配がバレるぞ」


少女は顔を逸らし、天井を見上げるように首を伸ばし、わがままに言った。


「それなら、その距離を計算して、この工場のどこにでも設置すれば、誰も私の気配を察知できないでしょう?」


「お前は、この工場を自分の物にしたいのか?」


「それが何か悪いの?せっかく手に入れた家なんだから、綺麗に飾らなくちゃ。この拠点は私の力で手に入れたものよ。気に入らないなら、出て行っても構わないけど?」


「おいおい、それは話が違うだろ。ユニットを設置した条件を忘れたのか?ギブアンドテイクが利益共栄の基本だろうが。」


「アンタ、うるさいわね。そんな可愛い子はいつかきっと捕まえてあげるわ」


「お前が言った、期限はいつだ?」


「私がやる気になったときよ」


「貴様…だから家出JKを信用するのは危険なんだ」


「お前、そんな理不尽なことを言って、今の状況が分かってるの?」


「それはどういうことだ?」


「あの触手変態おじさんが勝手な行動をしたせいで、彼が指名手配された。今、手を出すには難しい状況なのよ」


この工場の倉庫では、ユリアンが触手に捕らえた女性心苗を鑑賞しながら、触手によって流れ込んだ源気を堪能し、冷ややかな笑みを浮かべていた。


「まあ、彼は追跡してきた妙な機元ユニットを破壊したけどね。あれだけの人数の女を捕まえてきたんだから、しばらく外出しなくても問題にはならないだろう」


「彼だけでなく、お前も指名手配される相手になるはずだわ」


「俺が?なぜだ?」


「そんなことを私に聞かないで。お前自身がよく知ってるはずよ」


春斗は内心で焦りながらも、冷静さを保とうとし、頭に冷や汗が滲んだ。


「俺が…まさか、あいつの仕業か……」


「お前とあの変態おじさんは、しばらく、この工場から出るのを禁止よ」


 そこへ、赤いマントを着たトニが社長室に入ってきた。ウキウキとした口調で1日の成果を見せびらかす。


「お前ら、これを見てくれよ。今日はたくさん飴を集めたぞ!」


 先日空っぽだった袋は、5kgの米袋ほどに膨らんでいた。トニの喜ぶ姿を見て、少女は頭を痛そうに押さえた。


「あ〜あ〜、一番役立たずなやつが来たわ…」


厳しい状況に無頓着なトニが鈍い口調で尋ねた。


「何が起こったんだ?」


トニが上手くリア充チョコ飴を集めたことには感心したが、飴を食べるだけで何もしない楽天的な言動には素直に賛同できない。


意外にも少女の意見に同意した春斗は、手を組んで言った。


「そんなことは置いておいて、お前、彼女に手を出すならリスクを考えろよ」


「もし彼女をどこか狭い場所に誘い込んで捕まえた後、簡単に逃げ出せるルートを確保すれば良いけど……」


春斗は自信満々に邪悪な笑みを浮かべた。


「フン、そのことは俺に任せておけ」

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