転校してきた金髪清楚ギャルがぼっちな部活に入部届を出してきた件
ある日の放課後、俺こと板橋 慶介は部室にてある作業を行っていた。
文芸部の活動内容は至ってシンプル。小説を書けばいい。
俺はラノベを執筆しており、ついこの前ある文庫の大賞に受賞し本が執筆されたばかりだ。編集さんから話を聞くに売り上げは上々らしい。
もし一冊も売れてないなんてことがあったら俺は挫折していただろう。
「締め切りが…」
締め切りが一か月後に迫っている中、俺の二か月間の作業でまだ目標の半分にも達していなかった。
このままではまずいということで今日は真剣に仕事に取り組もうとしていたのだが…。
「こんにちは板橋くん」
部室の扉を開けて何か堂々した雰囲気で入ってきたのは羽賀 瞳。最近この学校に転校してきた女子生徒でやけに俺に絡んでくるうざったらしい女。
金髪の見るからに陽キャでギャルなのに清楚系。おまけに誰にでも分け隔てなく接するところからあっという間にクラスの一員に成り上がったやつだ。
俺みたいな陰キャにも普通に接してくるので何か裏があるんじゃないかと密かに思っていたりする。
「なんだよ。また来たのかよ」
「もちろん」
「特に用もないくせに毎日のように来るなって言ってんだろ。迷惑なんだよ」
言いたくもない言葉が口からすらすらと出てきてしまうのは彼女への嫉妬から来るもの。高校入学してまだ友人が一人もいない俺とは真反対の存在。
嫉妬してしまうのも仕方ないことだと思う。醜いのは自分でもわかっているのだがな…。
「早く帰ってくれ。今日は真面目な日なんだよ。お前がいると気が散る」
「その言い方的に普段は真面目じゃないんだね」
「…」
「ふふ。冗談だよ。しかも今回は正当な理由があってここに来たんだから」
「正当な理由?」
「うん。正当な理由。これを聞けば板橋君も私を追い出すことは出来なくなるからね」
羽賀さんが何を言っているのか俺には分からないが、きっと意味の分からないことを言ってくるのだろう。
彼女が部室にやってくるときは毎回のように悪戯をしてくるので大変迷惑しているのだが。
そういう空気でもなさそうだな。
「俺を納得させれるのか?今まで散々いやがらせしてきておいて」
「うん、できるよ。そしていやがらせは一回もしたことなんてありません!」
「…嘘つきだな」
「愛情だよ。私からの愛情!」
そんなことがあるわけがないだろうが。俺は万年ボッチ野郎なんだぞ。
俺に愛情を向けてきてくれるのは家族くらいだ。
最近妹の態度が急変してきて焦ってきているのだが、それは今は関係ない。
「ほら、これ」
羽賀さんはポケットから一枚の紙を取り出すと、ぴらぴら振って見せる。
「それがなんなんだ?」
「入部届だよ。受理してくれるよね?」
「まじか…」
新作です。