零落した使わしめ 4
「へ、平気です。──わ!」ぐい、と手を引かれびっくりした。
「寝ぼけた童子さんには探検が必要だなっ!もう一度塚に行こうっ!面白いことがあるかもよ!」
「ちょ、ちょっと!」そういうや否や月夜が照らす路地を走り出し、異界にバタバタと足音が響きわたる。電信柱や物陰に隠れていた人ならざる者たちがそれを目で追い、遠のいていくのを寡黙が見ていた。
話しながらも二人は塚の近くにたどり着いた。異界には塚の情景が鮮明に映し出されている。
人界ではただの路地の行き当たりかもしれない。
夜も更けた、午前二時。巫女式神がわずかにたじろぎアスファルトがザリ、と音を立てる。陰鬱に澱んでいるゆらぎが漂っていた。
「うわっ、ゆらぎがひどい」
「日に日に酷くなっていきますね」
「──あ」
「何かありましたか?」不意に声を上げた巫女式神に、童子式神は怪訝な顔をした。
「月がなくなっちゃった」
空には月がなく、雲だけが浮かんでいる。月は満ちて欠けるモノだ。ならばなくなるのは道理にかなった動きをしているのだろう。
「月なんて、いつも変わっていくものでしょう」
「昨日までは満月だったのに。ううむ?…気の所為?」
「う〜ん。気にしていませんでしたから…」
(──月や星なんて。今まで何も気にしていなかったような…?ま、いっか)
「寡黙がここは昔、人の墓だったと言っていました。」
「かもく?…ふうん、それがこうなってるワケか。あ、犯人見つかった?」
「い、いえ。まったく」苦笑いする。
「あたしはこの際、犯人なんて関係なくこの時を楽しみたい」
巫女式神はあけすけにニカッと笑う、やけに人間みたいなそれに童子式神は理解できずに首を傾げた。
「お前、たまによく分かんねえッス」
「まあまあ。ほら、塚に近づいてみようぜ。またアレが来たら逃げてまいてみせよーよ」
「食われてもしりませんよ」
二人は塚に、さらにそろりそろりと近づいてみる。草が生い茂る塚の前まできたが何も起こらず、はーっと胸をなでおろした。
ゆらぎのモヤに吸い寄せられるように、魔の虫が飛び交う。カサカサと足の生えた蛇が這っていった。
「神域があった跡ってこうなるのかな。あたしたち魔でよかった」
「まあ、魔には格好の餌場になりますよね。弱った神使を食べれる機会がありますし」
「まさか、童子さんは食べてないよな?」
詰め寄り焦った巫女式神に、呆れ顔になる。
「式神は主となった魂しか食べません。…もし、あっしが食べたとしたらルール違反で式神でもない者になってしまいます」
はあ、とため息をつくと地面に座り込む。
「神使ってうまいのかなあ?」
「さあ、ゲテモノなんで」
巫女式神は塚に上り、草やぶをかきわけた。「何してるんですか?」
「変なニオいしない?なんか、腐ったような?」
くんくん、と嗅いでみるも「何もしませんよ?」
「あ、ここらからする」