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神世の巫女の復活

 ──人の魂は、地球の一部。壮大な可能性と力を秘めている。そうは思わないか?


 明星を司る神が主に囁き、夢の中の自分だ、と主は椅子に腰掛け、耳を塞いだ。

 大昔に星を司るまつろわぬ神がいた、と祖父母は言っていた。名は天津甕星(あまつみかぼし)。その名を冠した邪悪なる者。

 いや、自分はアレなのだろうか?もっと、違う──。

 垂れ幕が上がり、物語は進む。


 むかしむかし人々が今のような文明を持つ、もっと昔、越久夜町には神々の声を聞き、民に神託を届ける巫女がいた。

 名をツクヨミと言った。巫女はその力から民から大切に守られ、女神や他の神々もまた巫女を頼りにしていたのだった。

 彼女のことを人々は口を揃えて言った…女神に選ばれし娘、と。

 ツクヨミは神から授かった名前だった。彼女が一番大好きな神。山の女神。


 ──目を覚まして。ツクヨミ。私のツクヨミ。


「また…あいつ、だ…」

 喉が渇いていた。ベッドから足をおろし、水瓶へ手を伸ばしたが、キラリと光ったものがあった。割れた鏡だった。


 ある神霊は言った。ならば干渉を拒み、魔や人だけで"運命"を左右する楽園を作ろう。

 …そんなもの、()()ではない──。

 否定したかった。

 人も魔も同じ位置についていたはずの、言わば原始の頃のような楽園へ。原始を満たしていた虚無こそが真実だと。

 …オレは…わたしは。

 否定したかった。神は、巫女の魂に散らばったとしても。

 どこか平和な、夢を見たかった。

 言わば原始の頃のような楽園へ。原始を満たしていた虚無こそが真実──そう、人類が神へ守られ、言葉を交わしていたあの時代へ。

 …オレが巻き戻してしまえば良い。


 パチリと何者かが目を覚ます。割れた鏡に手を伸ばした主が、ハッと自ら写った破片からわずかに退いた。

 腐敗した女性に似た者が一瞬、映し出され、おぞましくニヤリと笑う。


「な、何だ?」

 彼は恐怖を覚え汗を垂らした。あの笑みは自らのものでは無かったからだ。




 鬼神がフッと目を開き、モヤから人の姿になる。

「目ぇ覚ましたか…」

 台座に座っていた冷静がかつての巫覡へ目配せをした。




 ──魔神と呼ばれた人ならざる者は"多分"その場をたゆたうゆらぎから、あるい彼女は大切な、あの石から産まれた。

 あの石は宙から降ってきた物だという。隕石だとか、様々な噂がたったものだ。

 人ならざる者が生まれるのはその場に素質があるから。ケガレや淀み──あるいは聖なる神性。

 あの石は魔神を生み出すほどの何かがあった。

 ──私は生まれ落ちた場を離れず、活動してきた気がする。明確な自我はなかったかもしれないけれど、いつからか人や生命を食ううちにそれらしき"意識"が生まれた。

 色々あって僧侶に石に封じられてから、善良な神として祀り上げられた。

 ──主となった人間が誰だったかは忘れてしまった。人間なんて皆同じようにしか見えなくて、煩わしかった。主となった人間は私をこの姿に決めた。無力な子供の姿で人間に仕えたわ。修験道に関わっていたのかしら?


 …どうでもよい。人間なんて。

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