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巫女式神曰く

 あれから数日が経ち、荒れ果てた庭で黙々とゴミ拾いをしていた童子式神は、ある時、寡黙に声をかけられた。

「暗い顔をしているな。なんだ?()()()()()が弱いのか?」

「ああ、それよりも、巫女式神が…アイツどこに隠れたんだか。ぜんっぜん姿を見せねえ」

 そう吐き捨てると、休憩だと地べたに座り込んだ。

「そち、だから注意しろと言ったはずじゃ。あのカラスは危険じゃ」

 使役魔に安全な者は居るだろうか?


「ええ、鬼神の手下なんて予想もできねえかったです」

 はあ、と意気消沈する童子式神に、彼は間を置いて無表情で頷く。

「あのカラスは鬼神の眷属だった…と」

「はい。あっしは式神もどきか何かと思っていました。どう接していいやら…」

「そんなもの──拒絶するべきじゃ。ヤツは最初からそちを食いあらそうと狙って、擦り寄ってきたのじゃから」

「食い荒らす…」

「魂と精神エネルギーを」

「人ならざる者らしい理由ですね」

 憂い顔をする式神に、フンと鼻を鳴らし言いつける。

「おぬしから言うのじゃ、二度と近づくなと」

「…」


 二匹は無言になるも「近づくも何も、アイツはもう二度と現れないんじゃないでしょうか」


「そうか。見限られたのじゃな」

「ムウ。ひでえこと言いやがる!」

 露骨に、不機嫌になった使役魔に寡黙はわずかに口角を上げる。無表情な彼が時おり見せる嫌な笑みだ。

「人間の真似など無駄な時間だとこれでわかったであろう。これからは大人しく、式神として主に使え働くのじゃ」

「う…」苦虫を噛み潰した顔で脱力する。


「ほんっと、やな奴…」




 しつこい寡黙がいないのを確かめて、ぴょんと星守邸宅の塀から飛び降りる。ウサギのまま息を潜めて、道路を歩く。変幻するとしたら、猫ならば物音を立てずに目的地に向かえるだろうが、この姿に固定されているため叶わない。

 アスファルトを気をつけながら蹴り、歩いていく。

 くんくん、と空気を嗅いで耳を立てる。


(草木も眠る丑三つ時……とは行かないが、彼は誰時(かはたれどき)なら寡黙はいないだろう。よし。誰もいやしねえ)


 そう確認すると、ダッとウサギ特有の瞬発力で走り出した。

 走りながらも巫女式神を探す。道端に黒い固まりを見つけ、咄嗟に立ち止まった。

「巫女式神!」

 夜中に出されたゴミを漁っているカラスが驚いて、カァと飛んでいく。

「ちえっ、鳥違いだったか」

 カラスが悠々と空を飛行していくのを眺めた。


(あっしはあいつに別れを伝えるべきなんだろうか。友達ごっこを楽しんでいた、なんて。式神が人の真似事をして何になろうか。 ──とにかく今は、直接巫女式神から話を聞くべきだ。嫌だけれどそれが一番だ)


 異形のウサギのまま、町中を探した。カラスや神社の外を掃除していた巫女をまちがえ、ヘトヘトになる。


(そろそろ時間切れか…あんまり外にいる寡黙にバレる)


 月の入りが近く、空に太陽が昇ろうとしている。明るくなり始めたのを横目に引き返そうとする。すると周囲の防犯灯(ぼうはんとう)が切れているのに気づき、違和感を感じた。

 先程まで電灯はついていた。まだ、朝では無いはずだ。


「なんだここは…」

 人間の姿になり、しんと静まり返った路地を見回す。

「まさか魔筋(ますじ)?」


(変なところに迷い込んでしまったッス…)

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