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鬼神の眷属の巫女式神? 2

 気持ちはそぞろで、地主神の神社へ足を運んでしまう童子式神は──ハッ、と自らの行動が愚かなものだと思い足を止める。

 中秋にさしかかる、うら寂しい秋虫の音が耳に届く。人界でも虫の音はしているのだろうか?

 冬が来る前にはこの神社は様変わりしているだろう。


「よう」

 探していた巫女式神が鳥居に座り、こちらを見下ろしていた。意を決して童子式神は問うた。


「やい、おめえの主は鬼なんスか!」

「我を従えるのにはあんな者、主神にはならないがな」

「…?おめえ、巫女式神じゃないな?」

 全くそっくりな、巫女式神の笑みで奴はニタリと笑う。

「月の名を冠する者よ。お前こそ、童子式神ではないな?」

「あ、あっしは童子式神でござい!」

「──我は坐視者(そぞろみるもの)、何者も拒みはしない。安心するンだな」

 坐視者と名乗った者は身軽に鳥居から降り、隣に着地する。

「巫女式神にそっくりっス」

「皆まで言わせるなよ。──童子式神、巫女式神は今この神域にはいないぞ。帰れ」


「待てっス」

「その芝居がかった口調を止めろ」

「おめえだって我だの、なんだの言ってるじゃねーすか」

「あのヘタレた屍鬼から出演料をもらっているからな」

「…はあ?まさかおめえも偽モンの式神なんすか?」

 彼は片眉を上げ、チッチッチッとわざとらしいジェスチャーをした。


「いや?オレは宇宙狩猟の猟犬群、または天の犬だ。それ以外に何になれようか?」

「てんのいぬ?」

「知らねえのならいいさ。あんた風に言うのなら、巫女式神の冷静版ってとこだ」

「冷静版…冷静と呼びます」

「相変わらず安直な名付け方だなぁオイ。まあ、いいぜ。俺は心が広いからねえ」

 あざけりの笑いを浮かべる"冷静"に童子式神はギョッとした。


「冷静には真名があるんスか?」

「そらあ、あるさ。だがあれだ、この界隈では真名が知れちゃあ一大事なんだろ?郷に入っては郷に従え。だから黙っとくぜ」

「は、はあ」

「さ、帰るんだな。暇してると相方に怒られるぞ?」と、雑に茶化されていい気分ではない。すでに背を向けようとする不思議な人ならざる者に咄嗟に声をかけた。


「お、おめえこそ暇人に見えまス!」

「ははー、暇人同士お茶するか?生憎ヒマでヒマでしょうがねえんだ〜」

「呑気なヤツ」

「さ、お話しよーぜ。会話とは反射板に音を投げるようなものだ。そうだろ。どんなに話し合っても真意は伝わらねえんだ、反射するだけさ」

 冷静がまたシニカルな笑みを浮かべる。その物見遊山の態度がやけに気に入らない。それを見抜いた彼は、やれやれと肩を竦めた。


「そんなむつれた顔してないで、ひとおもいに思ったことを話しかけてみろよ。気が楽になるかもしれないぜ。」

「む…」

 ぴょん、と足だけウサギになって鳥居に登る。

「そこでお話したいのか?可愛いじゃないか」

「うるせえ!」

 彼も身軽にジャンプすると、器用に鳥居の上に着地した。ああ言われて童子式神は恥ずかしがったが、冷静は調子を崩さず身だしなみを整える。

 いじられなかったのに胸を撫で下ろし、神社を眺めた。

「巫覡から聞いたぞ。お前がかの神の残骸なんじゃないかって」

「ふげき?誰ですか」

「巫覡は巫覡さ。おお、この町にそれ以外誰がいようか」演劇の演技のように嘆く冷静に、どこかむかついた。

「ムウ。もうちょい分かりやすく話してください」

「そうだなぁ。少しだけ全体像を知ったら、お前も賢くなるか?」

「さあ!」

「悪かった悪かった。拗ねんなって。…で、あんたは巫女式神に何を言いに来たんだ?文句か?」


「いえ、本人の口から真相を聞きたかっただけです…」

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