おにがみ 6
人ならざる者としての殺気が丸出しで、牙をむき出した。妖気にあてられゾッとする。「ひぃっ!」
「そこの血なまぐさい式もどき。いい加減出てきたらどうだい?」
「わわわ、私も神だったのよっ!多分あなたより町の役に立っていた──」
鬼神は弱腰で枝を持ち、突きつけてきた山伏式神をケラケラと笑った。
「こいつは存じない神だな」
「や、やめて食べないでっ!」顔面蒼白でもがく。
「人からしたら迷惑な寄生虫だ。式神ってのはね…」
「食べないでっ!なんでもするわ!あの童子式神、とか言う奴を殺めてあげる!あなたを主として仕えてあげるから!」
「やはり無様だな、式神というのは」
暴れる式神もどきをニタニタしながら見下すと、枝をひと握りで砕いてみせた。
「いぎやああ!」
「…おめぇはそんなに式神が嫌いか?」
「ああ、私の崇拝していた神を陥れ惨めに恥辱した。まさか君が、あの神だとは思うまい」
「あの神?」
その言葉に童子式神は目を見開いた。
(──分霊であったのは、勘違いではなかった?)
「ふふ、童子式神なる式よ。知りたいかい?」
「…ええ。あっしは自分が何者だったのか知りたい」
「ならば貪欲に自らの願望に従えばいい。私は期待しているよ、また君が神にのし上がることを」