おにがみ 4
「童子式神、君なんだね?神威なる──」
「えっ、えっ?ど、どどど童子式神?!何故あっしの名を?おめーなにもんだ!」
彼はギラギラと興奮した目つきから、冷めきった冷静なものに変わる。
「ふん。そこの血なまぐさい奴が言っていた、人の道から外れた人の成れの果てオニ、だ」
「人の成れの果てって!そんなもの居たんすか」
「いるさ、目の前にな!」
ケラケラと楽しそうに笑う人ならざる者にこちらは虚勢をはる。食われてしまうのは弱みを見せるからだ。
逃げるが勝ち。隙を探さなければ──。
「ここの神を倒したのお零れをもらいに来たんスか?それなら遅いっス。あっしらの領地になるんですから」
「ふふっ、ここは元々あたしの神域だ」
「へお!?!」
「ずっと眠っていたんだ。だがね、やっとその時がきた。で、久々に起きたら白々しい奴らがあぐらかいて図々しく居座ってやがる。眠らされる前には見ない奴がね。ここは私を祀る神聖な場だ。それとこの場はあたしのルールで成り立っている。分かるね?」
「グッ…」
(神々は神域内の森羅万象を操れる。下手に動いたらどうなるか…ここは従うしかねえ…)
「…分かりました」
「よろしい」
(困ったものだ。鬼神のテリトリーに迷い込んでしまったッス…山伏のヤツが下手に動かなきゃいいが…)
忽然と消えている山伏式神が石碑の後ろに隠れ、こちらを見ている。どこまでも小物だと呆れた。
「まだ力加減が分からないもんでねぇ。人でいられるのが奇跡なぐらいだ」
「…あっしに何をお望みなのですか」
「お話をしよう。前から君と話したかったんだ」
上機嫌に鬼神は言う。アルカイックスマイルの瞳には不気味な光が灯っている。
「話すって…」
「そうだねえ。まず何から話そうか。そうだね、今宵君がやってきた理由について聞こう」
「偵察に来たっす。まさかこんなことになるとは」
「ふうん?偵察ねぇ…君の主はこの町を掌握しようとしていたんだね?知っているよ、──でも遅い。随分昔から私はこの場所で目え覚ましてたんだ」
ことが始まる最初から。なあ?
彼は子供をあやすように、分かりやすく言い聞かせる。
「盗み見たんすか、あっしらを」
「ああ…盗みも何も、君らが何かよからぬことを企て、実行しているのは魔の間では有名だった。この狭いコミュニティで秘密で何かをするというのは、早計だったのではないかね?」
瞬間移動をすると欄干に腰掛け、足をぶらぶらさせる。何もかもできる。この世界で、神は何でも決められるのだ。
魔なんて一瞬に消せる。
「…それは分かっているっス」




