おにがみ 3
場違いな、うるさい声が空気を止める。鳥居から山伏式神がバタバタと走ってくる。
「境内に入れるなんてついに神が弱ってるようねっ!どうする?だれがもらう?」
「もらう?」
「そうよ!この陣地を誰が貰うかって!」
「おやおや、お決まりのメンツになったなあ。」
「ん?何かあったの?」
彼女は首をかしげ、ハッと異変に気づく。
「神使がいないじゃない」
「神使?ああ、あの小さな獅子と犬のことか。確かにいたなぁ」
怪しげな人ならざる者はニヤニヤしたまま、台座を叩く。
「境内に魔がいるのに…出てこないなんて、どうしたのかしら?」
「主祭神も居ないようです」
シンとした境内はやけにどんよりとしており、清々しい聖なる空気ではない。童子式神は既に逃げ出したいと、鳥居へ退散したかった。馬鹿な山伏姿の式神もどきは呑気に狛犬らを探している。
「あなたは知らない?」
「アイツらなら…私が全部食べちまったさ」
「ぎゃあああ!」
獰猛な牙が覗き、初めて山伏式神は震え上がる。
「わははっ、そこの山伏まがいも──人を喰ったね?」
首根っこを掴まれて、びくりと跳ね上がる。
「な、なんで知って──ま、まさか…お、オニ?!ひ、ひい!食べないでええっ!」
「おいっ!」振り払って逃げていく式神もどきを追おうとするも、こちらもガッシリと掴まれる。
「ギャアア!」
「童子式神、君なんだね?神威なる──」