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おにがみ

 逢魔が時。九月の風は涼しい。カラスが鳴きながら空を飛んでいく──カラス。いつも現れる巫女式神がいないのだ。

 それはそれで普通なのだ、と自分に言い聞かせる。巫女式神が現れたのはいつだか定かではないが、気づけば話すようなふざけた仲になっていた。


(あー…ソーイウの人間くせえナ。気持ち悪いッス…)


 あの式神に会う前の記憶があやふやだ。断片的な、不確かな記憶だけがある。感情や感覚はない。人ならざる者として普通の──人間としてはまるで寝ぼけていたかのように。

 ──一度眠ったら起きないタイプだろ、あんた。

「眠っていた…?あっしは…これまで」


「何を、魔が眠ることなどありえようか。世迷い事を」

「あ…あっ、ええ。そうっスよね」

 尽かさず寡黙が思考をさえぎり、童子式神は釈然としないながらも頷いた。

「無駄なことを考えている暇はない。テリトリーの巡回をしろ」

「はい」

 そろそろと、本調子でないままに縄張りの巡回に向かおうとする。

「まて。やはり話がある。そなたの様子を見るに、暇そうだからのう」

「ひま、ではありません!」

「手持ち無沙汰にしているであろう」


 話があると、ミーティングが始まってしまった。

 町の住宅地で神々の管理における空白ができたという。

「なぜ空白地帯ができたかは検討もつかぬ。神域が前触れなく消失することがあろうか?」

「そうなんスか…不思議ですね。なら…退去したのでは?」

「普通なら退去したと考えるじゃろう?普通なら──それ応答の動きを前もって匂わせる。それくらい突如空白になることなど有り得ぬのだ」

「もしや…」

 チラリと美麗な微笑を浮かべた人ならざる者を思い出す。あれが地主神を殺めたのではないだろうか?


越久夜町(おくやまち)の神使らは我々の仕業だと決めつけ、警戒をさらに強めるだろうな。これは誤算じゃ。そちはそれを見てくる。よいな?」

「ええ…その場所は?」

「空白地帯とは…地主神が祀られていた神社じゃ」

「…」

「そちが見てきたように、あの神社で残念ながら何かが起きた。我々は式神。神々が定めた領域には入れぬ。真に何かが起きたのかは知れぬがのう、外側からでも見定める必要がある」

「もし…領域にできるのなら」

「うむ。それを見てくる、いいな?」


「ええ…」釈然としない童子式神の返答に彼はわずかに片眉をあげた。

「何かあるのか?」

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