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朝焼けの帰り路 2

 太陽が明ける直前の美しさを人ならざる者たちは知っている。透明な青色と白み始めた空気に、巫女式神は見とれた。

「アイツ、ずっと荒れ野にいるのかな」

 巨大なカラス形態になり、童子式神を背中にのせている。

 彼女はポツリという。

「そうじゃねえの?あの板碑がある限り」

「寂しいやつ。」と、言う人らしい魔に風に吹かれながらこちらは不思議がる。

「別に本人が幸せならいいんでは?」

「う〜ん。そうかなぁ」

 二匹は越久夜町の上空を飛びながら、無言になる。


「なあ、見るなのタブーってなんだ?」

「我々や人間界で起こる禁忌とされているものです。見てはいけないと決められた物事を破ってしまう、そうすると恐ろしい結末が待っている…」

「ああ、黄泉比良坂のお話?」

「…そういうのは博識なんすね」

「おうよ!あたしのアルジサマから教わったからね!」

「あの、おめえの主って──」

「おめいさんのアルジサマはこの町をどうしたいんだろうねえ」

 遮られ、当然だと割り切る。お互いの主を打ち明けるほど親しくもない。それに式神は主である人間を明かしてはならない。

 殺められたら、終わってしまうからだ。

「…。そりゃあこの町を良くしたいのです」

「へへえ~、そーか」さも興味無いと巫女式神は平淡な声を出した。

「アルジの願いが成就してより良い町になるといいな、童子さん」

「え、ええ」

「じゃあ、また明日」

 星守邸宅の門前に下ろしてもらい、礼を言う。お構いなく、と彼女は笑う。


 純粋無垢に見えてどこかのらりくらりとしている。掴みどころのない言動に安堵している自分がいる。

「明日、なんて、馬鹿らしいデス」

 人らしく笑ってみたが不格好な引きつったモノで終わってしまった。




 軋む廊下を歩きながら、童子式神は思考をめぐらす。


(主さまは神霊に遺棄された神域を手中に収め、利用することにした。神の真似事をすることにした。信仰を得られず消滅してしまった神の跡地。…。滅びゆく町をより良くするため。最初はそうだったのかもしれない)


(──神使らが守る結界を破壊し初めて…。神使たちの気を逸らすためだろうか?それとも本当に破壊したいのだろうか?)


 次は越久夜町を囲う神域の起点。


(どうするかは、主さまの思惑通りなら──壊すのだろうか?壊してどうにかなるんだろうか?)


(神々は何故何もしてこないのだろう?不気味だ。もう町は崩れかかっているのかもしれねえな)


 待ち構えていた寡黙が無表情にじっと廊下に立っている。童子式神は横目に通り過ぎる。


(──あいつも、たいがい不気味だ)


 彼と目が合い、そっと視線を逸らした。

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