荒れ野の式神もどきと童子式神の蘇る記憶 7
血のような紅眼をかすかに笑わせ、元魔神は言う。
「あなたの主の魂をちょうだいな」
「はぁっ?!」
呆気にとられ、開いた口が塞がらない。しかし式神もどきはフンと胸を張った。
「それこそバレたら私たちが地獄行きなんだから、人間の魂なんて一つや二つ、軽いぐらいだわ」
「困りましたね…あっしは主さまのために、起点を知りたいのです」
「じゃあ〜教えてあーげない」
自信ある様子でニヤニヤされ困り果てる。人ならざる者でさえ"防御壁"を可視できない。貴重な経験をしたこの式神もどきに頼る他ないのだ。
「あたしの主の魂を食べればいい。それでいいだろ」
「な、な…」
いきなり力強く宣言した巫女式神に度肝を抜かれる。
「太っ腹ね!あなた!」
「いいんすか?」ボソリと耳打ちする童子式神に
「あたしの主はあんなザコの腹に収まるほど弱くねえよ」
ニカッといつも通りに笑ってみせた。
「なあ、神域の起点ってなんだ?」
ひょこっと巫女式神が問う。
「あなたは知らないの?まあ、普通はそうよね。文字通り越久夜町自体の神域の起点になるわ」
湿地帯を歩きながら山伏姿の式神はいう。あれからコロッと態度を変えた彼女は潔く案内すると申し出た。
三匹でぬかるむ地面を気をつけながら歩く。けもの道さえないこの土地は部外者には厳しい。
「うーん、それはなんとなく分かる」
「私にもよく分からない、そこで上位の神々が集って何かしてるだけだもの」
「ルールを構成する一つです」童子式神が影を含み、付け加えた。
「…?それを見て、あたし達は大丈夫なのかな?」
「だから私も嫌がったのよ。でもあなたの主の魂を貰うんだからしょうがなく…」
「あたしの主の魂を食べたら間違いなく腹下して中毒死するぜ、くくっ」