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荒れ野の式神もどきと童子式神の蘇る記憶

 夜も更ける前。明かりの少ない山間部は満点の星空が広がっていた。

 越久夜町にある中規模の神社。人知れず鳥居に腰掛け、巫女式神はふいに喋り出した。

「なあ、あたしのアルジ。どう思う?童子さんは越久夜町の神域を弄ろうとしてる。それは悪いことなのかな?良いことじゃあないけど」

 彼女はどこにも居ないアルジに向かって話す。返事はなく、巫女式神はいつの間にかとなりにいる自らにそっくりな人ならざる者に目配せをする。


「魔神のいる蛇崩に行くのか」

 腰掛けたその者は気怠げに問うてきた。

「ああ、あんたは既に知っていたのか」

「そうだ。だいたいの事柄は見通せる。この世界の定められたストーリーは、そうそう変わらないようだ。結末もな」

「ハァー。あんたらしいね。相変わらず何言ってるか分かンねーし、結末とかよく分からないけどさ…。あたしにも答え合わせする日はくる?」

「さあ、俺はいづれこの世界から去るから分からんなァ」

「おいおい。あたしのアルジよ。なんでこんなイカれた奴雇ったんだ?」

 夜闇に沈む神社に向かって怒り気味に言うも、返事はない。


「よく言うぜ。お前もイカれてる」

 その言葉に巫女式神はカラス形態になり、奴と距離を保った。

「イカれた者同士仲良くしようじゃないか。まずはその口を閉じる。黙れ!」

「ハハハ、ピーチクパーチク可愛い小鳥ちゃんだ。さあ、行ってこいよ。今行けば愛しの童子ちゃんに会えるぞ」

「うがー!」



「荒れ野へ行ってきます」

「そち、荒れ野で何か異常なモノを見たのか。何故吾輩に隠すのじゃ」

「…有り得ない者だからです。あっしはあの日、荒れ野にいる人ならざる者に出会いました。あれは…闇を操る──」

 寡黙が不意に表情を陰らせ、厄介な人ならざる者にあたったな、と呟いた。


「えっ、あのエセ山伏が?」


「ふむ…。そやつは山伏ではないはずだがの。人間どもが荒れ地を開拓しなかった原因じゃ。荒れ野に巣食う暴食魔神。この土地に住まう人ならざる者らはそう呼んでいた」

「知らなかったっス…」

「そちは知らなくて当然じゃ。人々が鎌倉時代と区分している頃の話じゃからのう。とんと風の噂を聞かなくなったと思ったら」

 竹箒を動かしながら、童子式神はこの町のことを知らなすぎるとしょぼくれる。人ならざる者や式神なら仕方がないことなのだが、自分は町にずっといたような気がするのだ。


「そいつは、そんな大層な名前がつけられるほど人間たちを脅かしたんスか?」

「ワケあって村へ通じる道が荒れ野しかなかった。必然的にそこを通る旅人にとって魔神は恐るべき存在だったのじゃ」

「へえ…。そんな過去が…。あいつも、神様だったんスね」

「奴は式神になっていたのか。なるほど、なら辻褄があう。なら食われる危険性は低いな」


(──あいつ、も?あれ?)


「ほれ、行け。あやつが来るぞ」

「えっ」

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