山伏姿の式神 6
「ふんっ!人間なんて皆、同じようにしか見えないじゃないの。それに命令ばっかりするくせに壊れやすいんだもん。あー!煩わしかった。だって私、式神向いてないしっ」
むつれ、そっぽを向いた式神もどきに巫女式神はほとほと呆れた。
「おいおい…よく式神やってられたな」
「確かに人間って覚えにくいっス。でも、魂の善し悪しで…」 ハッとして口を噤む童子式神に、「あら。」 ニヤリと笑い、頬杖をついたまま
「そうよ、魂さえくれりゃいいのよ」
と、のたまった。
「おっかないねえ。しかし式神とは、人間に操られた哀れで摩訶不思議な存在だろ?それに自我があるのかないのかは本人すら分からない。あんたらは誰の感情で笑い、泣き、誰のエネルギーで動いているのかい?」
式神であるはずである者の言葉に二匹は硬い表情になる。
「なによっ!あなただって式神でしょ?!」
「ふふん。式神のくせに偉そうだなって思っただけだよ」
「はあ…ともかく、あっしは"防御壁"を見に来ただけなんス。今はここを領地にするつもりはねー」
「防御壁?なにそれ?ああ…町を囲う神域のこと?確かにあるけど、何のために?」
童子式神は答えられずに黙る。
──主の目的は誰にも知られてはならぬ。砂上の楼閣、まさにそうなのじゃ。
寡黙の言葉が脳裏を過り、「主さまの気まぐれです」
「そう」
式神もどきの幼い頬を軟らかい夜明けが照らし、こたりはハッとする。
「やべぇ、夜が明けるっス。早くテリトリーに帰らないと…」
「あら、もうおやすみの時間?」