山伏姿の式神 4
(もし夢とやらが本物なら──主さまが比喩した町の神域は荒れ野の先にある。人が近寄らない場所を選んだのだろう。それとも神域があるから人は近づかないのか)
(神域は人間や呪術師にはシールドとも呼ばれる…"普通"のシールドなら、我々魔にも…)
「また?!」
ガサリ!と何かが飛び出す音がした。それに童子式神は確信し、構えた。
案の定、草薮から例の山伏式神が現れ指を指してくる。
「テリトリーは渡さないわっ!これは宣戦布告よ!」
恐怖にひきつりながらも構える謎の式神に、こちらは異変に気づいた。
(何故直前まで気づかない?!普通のニオいとは違う…!コイツは式神ではあるが式神ではない!)
ハッと気づいた時には辺りは暗闇に包まれてしまっていた。奴の妖術に先を越されてしまったのだ。
「違うんスっ!」
「あなた、二度もなんの用?!」
「あっしは…ただ、おめーが何者か見に来ただけで!」
「は?だから式神よ!?」
赤い瞳を怒りに燃やし、闇を操ろうとしたその時だった──異形のカラスが舞い込み、それは人の姿に変幻した。
「おっとあたし抜きでおっぱじめようたあ、いい度胸じゃないかい!」
巫女式神が威勢よく立ちはだかり宣戦布告をする。
「あ、あなたどうやって!」
「簡単さ!あんたのユルいテリトリーを壊すことぐらい!」
逆鱗に触れたのか。彼女は鼻にしわを寄せ、化け物のような様相になった。
(ヤバい!)
「あんたら、絶対食ってやる!」
猛獣のような牙を晒し、蠢く闇をうぞりとうねらせた。水のような霧のような、異質な闇が触手のごとく童子式神に巻き付く。
「うぎょああ!」