夜明けの金烏
晴れ渡った空の下、長閑な自然界は復活した。あるのはだだっ広い昼下がりの草原だった。人や建物は居なくなってしまったが有屋や山の女神、鬼神などは辛うじてのこっていた。奇跡だ。
そう、奇跡なのだ。
全てが終わったのだと、その場にいた者は思う。
鬼神は嬉しそうに巫女式神へ駆け寄り、労う。「お前は町を救った"英雄"になったんだ。神にも等しい、なんと素晴らしいのだろう。ああ!時空は耐え抜いた!」
「ええ、あなたのおかげでこの時空は途切れずにすんだわ。ありがとう」
山の女神が傷をおいながらも、こちらに寄ってくる。
「あなたこそが最高神にふさわしい。」有屋 鳥子も絶賛し、たおやかに微笑んだ。
「あたしは…神にはならない」
巫女式神は複雑な顔つきで言う。
「やめろ!」
その場にいた鬼以外の神々が静かに答えを待った。すうっ吐息を吐くと、
「あたしはあんたの使い…あたしは──そんじょそこらの使わしめだ!」
巫女式神は目の前にいる主──神霊の神使になることを宣言した。
「なれたんだな…何者かに」ネーハが晴れ晴れとした顔で言う。
「勝者はあなただ、巫女式神…いや、使わしめよ」
「くそ…どうして!?!認めないぞ!」
当の彼はジャッジを信じられず取り乱し、胸ぐらを掴もうとするが女神に宥められた。
「あなたは上がいないとダメな人なのね」
「私は神を製造するつもりでお前を生み出したっ!神になるということこそが!お前の存在理由なんだ!!なぜ!越久夜町を救う偉業を成し遂げた、お前が──」
「鏡があったから、たまたま光が覗いたから──あたしはカオスを退散することができた。あたしの力じゃないし、あたしのおかげだと賞賛されるべきじゃないんだ。最高神になるような存在じゃあないんだ…」
「確かに神鏡のおかげかもしれない、希望を持ち続けられたのは誰?あなたしかいないわ」
山の女神は自分を卑下する鬼神の眷属を励ました。
「私はあなたが使わしめでも、否定しない。世界を救った者だけが、今、選択肢を握っているのだものね」
「卑怯な言い草だな」
「あら?そうかしら?」ケロッとした態度の春木に、巫女式神はムッとする。
「先輩の言う通りね。今現在、あなたしか、あなたの道を曲げられる者はいないのよ」
そんな会話を聴きながら、
「アイツと同じだ…私はこのムラを良くしようと…女神よ」
絶望的な顔をして立ち尽くしていた。
「あなたはこれでいいのか?いずれあなたは消えてしまうのに」
「消えないわ。消えるんじゃない、この星と一つになるだけ」
「あなたがこのまま滅ぶのなら、私も巫女の様になるかもな!」
「その言葉、しかと聞いたわ」
枯葉意図が読めず、眉を顰める。「どういう意味だ?」
「あなたに、最高神になる意思があるという事を」
「…ふん」口をゆがめ、笑う。
「勝手に言っていればいいさ。」
それを冷徹に一瞥すると、山の女神は背を向け歩き出す。
「神々を集めて、一から越久夜町を再生させましょう。」
「はい。」
有屋 鳥子が勇み足で後に続き、それに続こうとしたネーハが不意に敬礼をした。
「巫女式神…私は無明にもどる。役目は終わった。…ありがとう」
そういうとクスリと笑い、「君に幸あれ」
「これでいいのかな、あんたはどう思う?童子式神」
巫女式神はただポツリとつぶやいた。




