光り輝く主人公 4
巫女式神は落下しながらも涙を流す。水滴が空を舞い、髪がほどける。
どさりと草原に落下した巫女式神は、傷だらけになりながらも突っ伏した。
「いてえ……」
鳥のさえずりを聴きながら、巫女式神はそのまま寝そべっていた。
テリトリーが光で狭まっていき、カオスが弾ける。泥まみれだった世界が自然の風景に戻り、草原が出現する。文明が壊れ、月日がたった越久夜町が現れ太陽の光が雲から差し込んだ。
「ぐ、くそ…!どこまでも貶してくれるじゃねえかよ!」
槍に繋ぎ止められた天津甕星が、グラリと立ち上がる。巫女式神は「まだ、形を保ってんのか!!?」
「おい、何見てやがる。アホウドリ、この槍をぬけ」
「…あの、威光でも焼けきらなかったなんて」
力が入らず呻く。「な、んも変わらなかったのかよ」
「さあ、俺を受け入れろ。ハッピーエンドにしたいんだろう?神威ある偉大な星の使わしめに──憑巫になれ!」
「嫌だっ!」
巫女式神は耳を塞ぐ。
「はは…笑えるぜ。この期に及んで笑えるとはなァ!お前も拒絶するのかっ!」
槍をぬこうとした天津甕星の体に亀裂が走っていき、自らが消滅するのを悟る。
「あ、」
亀裂から──腕が伸び、天津甕星を優しく抱きしめた。
「!」
──わたしはあなたを拒絶しない。…わたしたちはわたしたちのままで、一緒に終わりましょう。
「神世の巫女?」
巫女式神は突如として出現した女性を見やる。
「一緒に終わる」
「ええ、もう、お互い…この苦しみから解放されましょう」
悪神だった者は光り輝く空を眺め、目がやがて空洞になる。
「おめえは、この俺を、自らを辱めたヤツを受け止めるのか。ハハ!愚鈍なオンナだ!」
「あなたを鎮める。神々の声や光、穢れを受け止める。それが、巫女としての役目だから」
「全くもって馬鹿なヤツ…」
灰になった天津甕星を抱きとめた巫女は涙を流した。
「てっきり、あのガキが受け止めるのかと思っていたが…そうか、そうなのか。一杯食わされるもんだな」
散々世界を壊した寂しがり屋は腕の中で、塵になり散っていく。寝転がりながらもこちらを見る巫女式神をみやり、女性は微笑んだ。
「あんたが童子式神の」
遠のくカオスの中で使わしめは、巫女が悲しそうな笑みを浮かべるのを垣間見、何故かと不思議がる。
「なぜ笑えるんだ?負けたんだぞ!終わるのが怖くないのかよ?!」
彼女は光の中に溶け消え、巫女式神は残される。何も無い白い空間、わけも分からぬまま空から太陽が眩く照らしてくる。
瓦礫の山に上り、立ち尽くし、居なくなった巫女たちの場所を眺めていた。しん、と静まり返った空気に巫女式神は素直に喜べなかった。




