光り輝く主人公 3
(今、声が聞こえたような。…いいや、幻聴か。なんにもない。ここには、なにも。可能性や未来すらなくなってしまったみたいだ)
虚ろな空気が五感を包み込み、視界があるのかと目を瞬かせ手のひらを見る。童子式神は行き倒れていた。
(満身創痍だ。…体も動かない)
童子式神は伏せながら、最後の力を込めてギュッと手をにぎりしめる。
「死ぬ…のは嫌だ」
「まだ…」手を付きながら体を起こし、震えながらも立ち上がろうと躍起になった。
「まだ終わってたまるかっ!」
暗闇にヒビが入る。童子式神も虚無の中で自分にまだ力があることを確信する。主が残してくれた可能性だった。
「まだおめーには山ほど言いたいことがある!」
虚無から虚無へと次元をこえ、外へ近づく。徐々に光の点が大きくなり、バッと開けた。先に巫女式神が居た。
「巫女式神っ!」
手を掲げる巫女式神と出会い、お互い手を伸ばし触れ合う。手を握り、触れ合った二匹はお互い見つめ合う。
童子式神は風に飛ばされそうになりながも宣言した。
「あっしは巫女でもない、天津甕星でもない。童子式神だ」
「決まったんだな、何者か」
「ええ、神格は得られませんでしたが…不思議と嫌ではないです。童子式神になれて良かった」
「あたしも、だ」
「あっしから全てを持っていけ。感情も夢も、何もかも!」
「ああ!持っていくよっ!あんたの夢、叶えてみせる!」
「それでいい!ああ…!おめぇは神威ある偉大な希望の星だ!」
光が二匹を中心に瞬き、全ての世界線の帰路をちぎる。巫女式神の瞳から涙を流し、不思議がる。
「…さようなら、巫女式神」
「おい!」
手が離れてしまい、光の世界が遠のいていった。