光り輝く主人公
瓦礫に倒れ込み、ぐったりとした山の女神に巫女式神は近寄る。
「春木…!」
傷口から血を流した山の女神は何とか立ち上がろうとして、倒れた。人ならざる者の物ではなく赤い血になっているのに気づき、巫女式神はハッとする。
「私の神性が薄れてきている──今しかないわ。あれが縫い付けられている間に…あれは次元や生命など地球上のあらゆるものを傷つけ、破壊できる。自由になったら勝ち目がない」
巫女姿の式神は縫い付けられた天津甕星を見遣り、焦燥する。
「あたしじゃ戦えないよ」
ボロボロになった女神が手のひらの上に神鏡を召喚した。
「これは神々が干渉していた時代のものだから、私の力を充分に吸い込んでいる。カオスから秩序が覗いたら、これで照らして」
「それは…」
「ルールを映し出す鏡。こんな風に使うのはあれだけれどね。これなら蔓延するカオスを退けられ、ルールをリセットできる」
「リセットしたら、あんたのルールもなくなってしまうんじゃ…」
「そうさ。でもまたやっていけばいい。何度リセットしても、やり直せばいいんだ。今はそれしかない。さあ」
「…あ、あたしがそれを?」
「あなたならできる。一番上だと思うくらいに、高い所へ掲げるんだ。宇宙をうつしだせ。希望を信じろ、太陽を思い出せ。絶対に光は現れる…」
苦しげに息を吐くと、女神は横臥した。
「ま、待ってくれよ!あたしが、そんな大役──」
「私たちはもう終わってるんだ。変わりたくてもね。なら誰がやる?お前しかいないだろ?」
「…あたしはただの式神なのに」
「いいや、お前は何にだって成れるさ。そんじょそこらの魔にも神威ある偉大な神になれさえする。未知数な生き物だからだ。それをこの最高神が望んでいるんだ」
「…!うん、やるよ!やってやるよ!」
「その意気だ!ドカンと一発かましてやれ!」
女神がどすんと巫女式神に鏡をおしつける。「う、うん!」
鏡を手に飛び立った。
アルバエナワラ エベルムと鬼神はカオスの中、何かを感じ取る。「山の女神の神性が弱まっている」
宇宙人である彼はいい、巫覡は眉をひそめた。
「この時空はいつまで持つ?」
「精々半日持つか持たないか、かねえ?もう天津甕星の無茶ぶりについていけねえのさ」
「はははっクソッタレだな」
「ここまで来ても死ぬのが怖いのかい」
「当たり前だろ。アンタとはロクな時間を過ごせなかったな、クソだ」
天の犬はふっと吹き出す。「ホントだな」
「…………最後の晩餐だ。食っていいぞ。」
鬼が言うと、冷静は大きな金星を見上げる。「小さな星だ。間食にもならねえ」
「そういうなよ。我々には重大なものなのだから」
「ふふ、さよならか。もう会えるとは思えんがな」