表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/166

光の視点 3

「火球?流れ星?」

「天の狐か、天をかける犬かもしれんぞ」

「あれがあんたなのか?」

「昔の人々はそう言っていたがね。俺が空を駆けたら、災いが訪れると怯えていたぜ。まあ、時空を走るなんざ今はしなくなったが」

「ええ〜!あたしもやってみたい!」

 目を輝かせて巫女式神は言った。


「あんたも無明をさ迷いたいのか?変わり者だな。ほら、あんたの末路が降ってくるぞ」

 流星群が地面に落ち、塵となり弾ける。線香花火の火花のように儚く星は消えてしまう。あれは何なのか?

 こちらはそれを見て天の犬へ視線で訴えかける。

「時空の歪みが広がり続けている」

「歪み?ゆらぎじゃなくて?」

「それこそがゆらぎを生み出している原因だ。見ろ」

 夜空に亀裂が走っており、そこからたくさんの流星が漏れている。向こう側から何かが漏れようとしている。

「そろそろお前の存在を間借りするのも終いになりそうだ」

 そこらにあった流星を手にして、握りつぶす。弾けた光は断末魔を上げて巫女式神を照らした。末恐ろしい気がして悪寒が走る。


「帰るのかい?」

「ああ。この星も俺を煙たがってる」

「?」

「地球はおっかない奴でねえ。…この星に見つかったら帰らなきゃ行けないからなぁ、まだその時じゃなねえんだ」

「おまいさんって何でこの星に来たんだ?地球侵略?」

「この世界を存続させるためだ」

「えっ」

「この時空は崩壊し、大虚に横たわる残骸になるはずだった。だが何かが変わり、本来とは違う道を歩み始めた。それが何なのかは想像におまかせするがな」

 腕を組み、不自然に輝く月を眺める。

「大虚って例の別天地かい?」

「ああ、根源の世界だ」


 巫女式神は変哲のない地面を眺める。下にあるわけじゃねえよ、と天の犬はせせら笑った。

「鬼神は眠り続け、巫女も輪廻を回る。そんな世界もある。俺は約束されたのだよ」

「約束?」

「"この私が望むとおりハッピーエンドにして欲しい"、とかそんな甘ったれた約束だ」

「えっ。その人は誰なんだ?」

「教えても何の足しにもならん。このイカレた時空に望みを託した奴もいるのさ」

「ふうん」

「さ、進むのだろ。すべきことをしろ」

「待ってくれよ、最後にこれだけ教えてよっ」

 手を合わせてお願いする。


「あんたの目的もそうだけど、越久夜町──」

「特異な分岐をしたこの時空を、創造神の宝物にする。そして贈呈する。歪な輝きを持つ、この光を。そのために幾多の分岐を誤った者たちの光が、時間になり、続かせなければならねえ」

 落ちる星々に照らされ、彼は陰影を深めた。

「…。そうか、越久夜町は続くんだな。よかった」

 巫女式神は複雑な気持ちで物事を飲み込もうとする。

「あんたがどう思おうが、この星は続いてくぜ。」

「うん」

 釈然としない顔で頷き、やはり理解できないと表情を曇らせた。


「さ、休み時間は終わりだ」

「…ありがとう、少しだけ頭が冷やせた気がする」

「ああ」二人は消えかけた流星の転がる河原に立ち尽くした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ